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「プロとは(その2)」

12月初日、アメリカ・ポートランドからやってきたカスリーンクレア、ケーシーニール、アレンハンターの3人と東京下北沢のラカーニャというライブハウスで演奏した。昨年に続き、今年で2度目となるこの組み合わせでは、カスリーンとケーシー2人のオリジナルソングを中心にたっぷり2時間半、後半には3人がロックバンド「Big Bridges」で活動をともにする大橋隆志氏がスペシャルゲストとして加わり、多くの方に聴いていただいた。大橋氏とは昨年も同じ場所でご一緒させていただいているのだが、すべてが「プロ」だなーといつも感じる。昨年はきっと初めての場所ということもあり、大きなペダルボード(ギターの音響効果をつくる小型の機械を載せるボード)を持ち込み入念に音作りをしていたが、今年はペダル1つをポンと持ち込みわずか2-3分で音作り完了。場所の雰囲気や状況に合わせているだろうし、カスリーンたち3人との距離感もより近くなっているというのもあるのだろうが、どんなギターアンプがライブハウスに置いてあってどんな音だったかを覚えていたようだ。そしてやりなれた曲ということでリハーサルなしのぶっつけ本番。本番では全体のバランスに気を使いながらも抜群の音を出していて、私も演奏しながら聞き入ってしまった。
音楽家という仕事の中で、どんな環境や状況であっても、観客を唸らせるプロのなせる技である。
しかし一方で十分な演奏(演出も含め)環境の整わない状況では演奏をしないというのもまたプロの選択であるという意見にも共感する。ロックアワードにおいて、プレゼンターとして登場したジミーペイジ氏がで演奏をしなかったことが話題になった。ジミーペイジ氏の演奏を期待していたファンから主催者側にクレームが寄せられ、最終的に主催者側は「希望者」に返金という対応をとった。
私は何ともこの対応がすっきりとしなかった。

建築の仕事に携わる者、一度ならず顧客からのクレーム経験はある。
一生懸命に仕事をしていても、誠実に誠意をもって対応していても、対人間である以上現実に起こりうる。そのためトラブルは最小限に抑えようと、打合せは記録をとりサインをもらい、詳細な現場内覧を行う。先輩からは「建築の仕事(プロ)というのは、クライアント(素人)に対して、まだそこに何もない空間を、あるかのように魅力を説明するようなものだ。」と教わったものだが、昨今クレームへのリスクマネージメントが行き過ぎると、「こんな魅力もありますが、時としてこんなことも最悪ありえます。それでもいいですか?」というやり取りが増えているように感じる。

プロとは「クレームを出さないようにする達人」ではなかったはずなのに、、、
なんとももどかしい。

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著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm