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「初詣 鎖大師」

毎年、鎌倉の鎖大師として知られる青蓮寺へ初詣に行っている。三が日の間行われる護摩祈願が主な目的である。
国の重要文化財に指定されている鎖大師は、膝関節等が鎖で結ばれ動くようになっている鎌倉時代に作られた珍しい木造弘法大師座像で、青蓮寺の本尊である。
他界して20年になる祖母が、40年ほど前に長年やっていたご詠歌の際に立ち寄ったことをきっかけに毎年この青蓮寺を訪れており、その後父が受け継ぎ訪れていた。私は父が他界する年の1年前に一緒に訪れて以来通っているので今年で5年目となる。
ここで行われる護摩祈願とは、本尊の前に設けられた壇で護摩木を焚く真言密教独特の行の一つで、舞い上がる炎を知恵の象徴とし、護摩木という煩悩を焼くことにより、願いが成就することを祈るものだという。時間にして30分ほどの護摩祈願だが、不思議と舞い上がる炎に気持ちがすいこまれ、煩悩を焼くとはよく言ったもので、昨年一年間のことを思い出しながら、あっという間に時間が過ぎていく。
私が両親と一緒に訪れた5年前より先代の住職のご子息である僧侶が護摩祈願を務めるようになった。受付にいた先代住職は、そろそろ私も息子に譲りますよと話していた。昨年の正月護摩祈願のあとの挨拶では、住職を継いだという報告があり、その若い住職は気取らずに真言密教の荒行の説明などについてとても分かりやすい言葉でゆっくりと話していた。

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昨年11月、毎年この時期に届く正月護摩祈願のお知らせとともに、住職の悲報を知る。
正月、本堂の脇に置かれたくさんの花の真ん中に若い住職の遺影が飾られていた。
今年はなにか今までとは違った気持ちの初詣となった。

 


著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm