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「新宿レコード」

東京西新宿にある「新宿レコード」は、ロック特にプログレッシブロックやハードロックを専門に扱う輸入レコード店である。その「新宿レコード」は、今年1月末名物店主である藤原夫妻が店を退き一つの節目を迎えた。アナログレコードを知らぬ世代が増えている中で、個人経営の輸入レコード店が1970年の開店以来47年間店舗を構えているというのは驚きである。
私が音楽にのめり込むようになったのは中学生頃からで、当時全盛であったレンタルレコード店でレコードを借りてきては、兄の部屋にあったプレーヤーと自分のラジカセを接続しカセットテープにおとすとテープが擦り切れるまで聴いていた。
大学に入るとお茶の水のディスクユニオンというレコード店でアルバイトをした。ディスクユニオンは新譜の国内盤・輸入盤、レコード・CDのほか、中古も扱う店だったので先輩に教えてもらいながら買取りや値付け作業もした。現在では大手中古CD店の査定はデータベースに基づいて行われているようだが、当時は査定担当者の経験や知識によるものがほとんどで、廃盤や貴重盤など高価な値のつく盤の見極めは非常に気を遣うものであった。私は休みの日になると西新宿のレコード店街の隅から隅までレコード棚を見て回り、お目当てのレコードを探しながら中古レコードの価格相場をチェックしていたのだが、その最後に立ち寄るのが「新宿レコード」だった。お茶の水のレコード店のアルバイト店員だった私にとって、西新宿のレコード店街の老舗はなんとなく敷居の高いものだった。
数年前「新宿レコード」移転の話を聞いた。移転先が西新宿のしかも同じビルの一つ上のフロアと知ると、なんとなく安心した。
今年1月最終日久しぶりに「新宿レコード」を訪れた。藤原夫妻と親しい訳でもないが、なんとなく足が向いたのだ。そこにお二人の姿はなかったのだが、西新宿からレコード店が減りもはやかつてのレコード店街のことを知る人が少なくなっているいまでも、いつもそこにあるということが、上客でなかった私にとっても嬉しかった。

そういえば、アルバイトを始める前、「新宿レコード」で初めて買ったのが、昨年演奏をご一緒していただいた大橋隆志さんのレコードだったと思うと感慨深い。

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著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm