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フルーツサンドのこと。

 すぱっと美しくカットされたフルーツと、たっぷりの生クリーム、そしてふわふわと柔らかなパン。見た瞬間、気持ちがグッと盛り上がるフルーツサンドが、近ごろ自分の中でのブーム。と思って気にかけるようになったからか、サンドイッチ専門店にもフルーツサンドは種類豊富に並んでいるし、コンビニでもフルーツサンドが当たり前に置かれていることに気がつく。世の中でも人気なのかと改めて実感すると同時に、選択肢が増えて嬉しいなと思う日々。
 子どもの頃にフルーツサンドを食べた思い出がないから、フルーツサンドとの出合いは大人になってから。何度か食べてもフルーツだけで食べたほうがよくない?といういう印象だったのを覆してくれたのは、10年ほど前に食べた高島屋の地下にあるフルーツショップ〈ホソカワ〉のフルーツサンド、メロンとパパイヤ。なぜか下鴨の本店にはないこの組み合わせ、完熟マスクメロンの完熟ぶりが最高だったと今も思う。口の中にジュワッと果汁がほとばしって、パパイヤのコクと食感、そこにさりげなく生クリームも顔をのぞかせ、食パンのほんのり塩けがふっと引き締めてくれる絶妙さ。千円オーバーも惜しくないと、心の底から思った。なぜこのフルーツサンドに手を伸ばしたか、今となってはまったく記憶がないけれど、選んで食べた自分を褒めたい。
 という原体験があるからか、薄くスライスしたものより、ごろんと存在感たっぷりのフルーツが入ったものが好み。マスクメロンといちご、バナナ、パイナップル、パパイヤの5種類が定番の〈ホソカワ〉はいうまでもなく。いろんな果物の完熟具合を見極めてサンドにするミックスは、フルーツパーラーならではの贅沢と実感させてくれるのは平野神社の向かいにある〈クリケット〉。
静岡産マスクメロンやマンゴーはじめ、季節のフルーツが7種以上が入ったフルーツサンドはケーキのような存在感だ。’15年11月に登場して以来、月替りのフルーツサンドを食べに行くのが楽しみになった〈市川屋珈琲店〉は、口の中にフルーツがたっぷり入ってくる感じを楽しんで欲しいというパン3枚仕立て。大ぶりにカットされるフルーツはもちろん、江戸柿と富有柿の食感の違う2種類の柿などユニークな組み合わせも魅力。ついつい足を運ばずにはいられないのだ。自家製パンを使っているのは姉小路にあるベーカリーカフェ〈アネ〉のフルーツサンド。生クリームに隠し味の秘密がある濃厚なクリームのフルーツサンドは、ケーキに近い印象。小ぶりでも食べ応えがあって、他にはない味が嬉しい。もうひとつ変わり種では毎月25日に〈串揚げおもと〉で開かれる「オモテ市」などに出店している〈うめぞの茶房〉のフルーツ餡サンド。あんことマスカルポーネ入りのクリームを使ったフルーツサンドは、まず見た目に心奪われて、和菓子とも洋菓子ともいえる味に満足する。新スタイルとしみじみ思わせてくれる味だ。
 最後に紹介したいとっておきは、間之町御池上ルの〈サンドイッチのタナカ〉。40年以上続く街のサンドイッチ店に並ぶフルーツサンドは、いちごにりんご、キウイ、パイナップル、それにみかんの缶詰(みかんだけは剥いてたら時間がないねん、と店主・田中さんの弁)の5種類が、三角の先までしっかり入っている。それでいて380円という嬉しすぎる値段。毎日フルーツサンドもOKな街の名品がここに。

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著者プロフィール

月刊連載『毎日くいしんぼう』毎月17日公開
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大和まこ(やまと まこ)

京都在住のライター&コーディネーター。雑誌『&Premium』で「&Kyoto」を連載中。