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第十四回 徳田木工

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SONGBIRD FURNITUREには、通常のラインとは別に、「徳田木工(通称トクモク)」というもう一つのカテゴリーがある。 僕がデザインしたものを工場で職人さんに製作してもらっている通常のラインに対し、徳田木工は原則的に実際に全て僕が自分で作っている。 デザインだけでなく、家具も作れるんですかとよく驚かれるが、その逆である。ちゃんと家具の製作や木工の勉強や修行をしたこともなく、どちらかというと 昔から手先は不器用な方である。なので、「家具製作のスキルを持たない人間があえて作る」というよくわからないコンセプトのもと徳田木工を始めた。

きっかけは、お客様とのちょっとしたやり取り。 「家具量販店の家具はあんなに安いのに、なぜこのお店の家具は高いのか」ザクッといえばこんな質問を何度か続けてされた僕は、いろいろと考えさせられた。
答えも一つではないし、簡単に答えられる問題ではない。あらゆる規模、条件や原因が関係している複雑な話である。 安くない理由を説明するより、なぜ高いのかという部分と、量販家具のお店とは違う部分をメリットとして理解してもらう必要があると感じた。

家具の価格は、大まかに言えば、製造原価と呼ばれる原材料(木材やスチール、ウレタンや生地など)や、製作加工費・工賃(人件費)、諸経費(輸送コストや梱包費)に 加え、販売利益で構成されている。価格を安くするという事は、このどれか(もしくはすべて)を低く抑える必要があり、その考え方や方法は様々である。
大手量販店などはそのスケールメリットを生かして、安い材料を使うのはもちろん、海外で大量に生産する事で、人件費や材料効率を良くし製造原価を抑える。 発生する輸送コストはノックダウン(組立)式にすることにより圧縮。さらに販売価格を抑える為、薄利多売で単体の利益も削る。大抵の格安量販家具のお店は、こうした 企業努力や自社の特性を生かしてある程度ちゃんとしたものを安定的に低価格で販売しているのである。

私達のような規模のお店で製品の販売価格を安くする場合、量販店のような方法はまず難しいので、違う方法で価格を抑えなければいけない。
そこで「徳田木工」を始めることにした。 材料は通常は仕上げには使わない構造用合板やラワン合板といった合板の中でも特に安価なものを主に使い、工具も一般的な日曜大工レベルのもので、作るのは素人の僕である。 当然スキルに見合った簡単な構造のものしか作れない。 要するに「原材料」と「製造コスト(人件費)」の部分のみを明らかに低く抑えて、量販店と同等の価格を実現させようというシンプルな考え方である。なぜ安いのかわからないのではなく、 どこが欠落しているのか、安い理由が見た目でわかるようにしてみようと考えた。「ね、職人(プロ)が作るものって凄いでしょ」と言うために徳田木工を始めたとも言える。 いかに通常販売している職人さんの作ったものの品質や技術が高いか、いかに都度木材の種類や脚の塗装が選べる事、サイズを自由に細かく指定できる事が特別な事か、御理解を 深めて頂こうという目論見である。
まー、実際は、そんな単純なものではなく、材料も都度購入しなくてはいけないし、自営業者の自分が動くことは一番コストのかかる事だし、あくまでも価格の構造説明のための実験と しての「徳田木工」である。

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こんなに色々考えて、始めた徳田木工だが、根が真面目な(笑)僕はどうしても「より綺麗に作りたい」「自分の技術以上の仕上がりにしたい」という欲が出てきて、道具をより良いものにしたり、 Youtubeで木工動画を夜な夜な観て研究したり、作ること自体が楽しくなり、いい気分転換にもなるし、一時期は本業そっちのけで木工室にばかりこもっていた。 さらに、素材のチープさや、「素人っぽい仕上げが逆に良い」というお客様がいたり、製造技術の無さからくるシンプルなデザインも好評で、価格の安さも手伝って本業の家具ラインより受注が 多い時もある。
素直には喜べない、ちょっと複雑な心境である。

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著者プロフィール
月刊連載『月刊 唄鳥』毎月5日公開
icon_songbird徳田 正樹
インテリア・プロダクトデザイナー
SONGBIRD DESIGN STORE.」代表

京都生まれ。大学卒業後、内装会社勤務を経て、1999年「IREMONYA DESIGN LABO」の立ち上げに参加。その後、2008年まで同社のデザイナーと代表を務める。2008年退社後、Masaki Tokuda Design.設立。2009年に、京都でカフェを併設したインテリアショップ「SONGBIRD DESIGN STORE.」開業。