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第10話 こっそり

蛸のイラストはいつも突撃依頼&現場で描いてもらうのをモットーとしています。

みなさん「えええええーーーーっ、いま?」と内心思っているだろうに、笑顔で受けてくれてありがたい限りなのですが、わたしは発見しました。ひとり、こっそり練習した方を!

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その方と、完成形のイラスト。蛸よりイカがいいというので、イカの高下駄。

著名な書家の中澤希水さん。希水さんにとって、書、イラスト、ロゴなどはすべて作品。つまり書くプロフェッショナル。こちらのイカも愛らしさとセクシーさが滲み出ております。文句なし。迷わずよくササっと描けますね~、さすが!と思ったら、希水さん、ノートを机の奥に押しやろうとしています。あれ? ちょっとちょっと!それ見せて!

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「あははー、こそ練しちゃった」
希水さん、練習を見つかって照れ笑い。練習といってもハイレベルなんですけど? 左から右へ、ポーズとバランスがだんだん決まっていき、目の位置があるべきところへ収まって完了。足の角度は入念にアップで。なるほどー。

希水さんは書道家のご両親のもとに生まれ、1歳ごろからずっと筆とともに成長してこられたという。中学高校も所属は書道部。しかし練習ぎらいで、合宿でも合同練習の時間はずっと絵を描いてやり過ごし、夜、みんなが寝静まってからこっそり字を書いていたのだという。「基本的にさらりと書けるふうでいたいんですね、カッコつけて」。古典を見直し、美しい芸術に学ぶ姿勢は、人が思い描く「書家」の姿そのものなのに、眉間にシワを寄せて筆を振り回すことは好まない。練習は基本こっそり。風のように、水のように、お名前のように。

プロにタダで描いてもらったので、ここで宣伝をひとつ入れさせてください。
4/1~4/16 の金曜から日曜(平日は予約制)
希水さんの故郷、静岡県浜松市で個展「中澤希水展」が開催中です。
お問い合わせはHirano Art Gallery tel.053-474-0808

話は変わるけど先日、東京で高知の在来豆を食べる会がありました。
さまざまな色の大豆やインゲン、大きな落花生、薬効成分が高いのではないかとみられる幻の八升豆(調査中)。在来の野菜以外に、在来豆という未知未踏のテーマが全国にあるのだと思うと、食の世界の奥深さにため息が出る。忘れ去られている食のすべてを探し掘り起こすには、人生は短すぎる。

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土佐在来豆たち。左上は試食用にゆでたもの。

土佐在来豆の説明を受けたのはパティシエの皆さん。昨年「洋菓子材料図鑑4号」というムックで、愛媛と高知へ柑橘ツアーをご一緒した方々。蛸イラストを描いていただきました。

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恵比寿「レザネフォール」のオーナーパティシエ、菊地さん。マイペースでおっとりした行動と相反する、鋭い感性と技術力のギャップにファン続出。

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銀座ウエストの金子さん、パティシエさんたちの産地ツアーを企画して各地をめぐる「旅するパティシエ」。面倒見のいい、優しい紳士。

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金子さんと菊地さんのイラスト。金子さんはサンダルじゃなくてスニーカー? 菊地さんはつっかけサンダル8個から描いてました。

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元「グラシエル」の江森さん。ミラノ万博で行なわれた菓子のコンクールでは日本代表を率いて優勝。世界チャンピオンでいらっしゃる。この夏、神奈川県の中央林間に自身のパティスリーを開業決定。

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江森さんのイラスト。サンダルが風船のような、矢印のような。タコ墨がリボンになるあたりが、パティシエさんらしい。

在来豆が本当にお菓子になるのかしら?
まったくわかりませんが、来シーズンを期待して気長に待ってみましょう。おそらく凄腕のプロのみなさんのことだから、こっそり試験を繰り返し、何気ない顔でおいしいものを出してくるに違いない。
プロとはきっとそういうものであります。


著者プロフィール
月刊連載『蛸のサンダル』毎月6日公開
icon_asai浅井 裕子

出版社 柴田書店勤務。外食業担当からキャリアをスタートし、料理技術、宿泊業、製菓製パンなど幅広いジャンルをカバーする食の編集者。パティシエの小山進さんや辻口博啓さんの書籍などを担当。「mook 洋菓子材料図鑑vol.4」編集長、「mook The Coffee Professional」編集長など。趣味はベランダ園芸。今夏はジャガイモとナスを栽培中。