title_nagahama

「タイタニック」

今年もセントパトリックスデーに関連したイベントで演奏させていただき、各所ともその盛況ぶりは、さながら映画「タイタニック」の三等船室のパーティのようだった。

映画「タイタニック」は、20世紀初頭に建造された当時史上最大級の豪華客船「タイタニック」の史実をもとに映画化されたものだ。イギリスのサウサンプトン港からニューヨークへ向けた処女航海中の1912年4月14日の深夜に沈没したこの船が北アイルランド・ベルファストで建造され、最後の寄港地がクイーンズタウン(現アイルランド・コーヴ)であったことを知る人はかなりのアイルランド通であろう。映画序盤でヨーロッパからアメリカへ新天地を求め船旅する様子が描かれ、主人公の二人が三等船室のアイルランド人たちとスタウト(黒ビール)を飲みながら、音楽やダンスに興じるシーンはとても印象的であった。そのためこの映画が公開されて以降「アイルランド音楽とはどのような音楽ですか?」とか「アイリッシュダンスとはどのような踊りですか?」と、まったくそれらを知らない人から質問をされると、わかりやすく「タイタニックという映画を知っていますか?その三等船室のパーティのシーンで、、、」と答えたりしている。しかし大きな枠組みでいうと外国の文化を説明するというデリケートな場面において、その答え方が本当に良いのかと考えさせられることがある。映画の中では一部アイリッシュダンスを踊っているものの、主人公はアメリカ出身、イギリス上流階級出身という設定で、アイリッシュダンスは踊らないけれども、雰囲気に合わせて自由に楽しく踊ってしまうところがクローズアップされているということや、音楽においても細かい部分、例えばシーンの冒頭に登場するバウロン(アイルランドの片面太鼓)は1912年当時アイルランド音楽に使われていなかった等とつけ加えて説明したいこともある。アイルランド音楽とアイリッシュダンスがアイルランド国内のみならずワールドワイドなものになっている現在だからこそ、全体的にはクラック(アイルランドの言葉で楽しみの意)な雰囲気がまさにアイルランド風と伝えることが映画の中だけでなく重要であると思うが、イコールダンスや音楽そのもの本質ではないという部分も伝えていけたらよいと思う。

c_nagahama15

 


著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm