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“外苑前の海”

初めてここを訪れたのはオープンして間も無くの頃。カンテサンス出身の若手シェフで「魚」のみで構成される肉無しスタイルのフレンチ、という斬新なコンセプトが話題になっていた。当時からカンテサンスに通っていた私は興味本位で伺ったのだけれど、その師に忠実な完璧なまでに火入れに驚いたのだった。あの日から、一年半。食べ友のフレンチシェフ君と再び、外苑前深海ランチ。
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前菜はグリーンが鮮やかな旬のアスパラ。
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ズドンと潔く、香りも瑞々しいグリーンアスパラにモリーユ茸とほのかに苦甘いグレープフルーツのコンフィ。向こうにはミル貝とギョウジャニンニクという新鮮な取り合わせ。グレープフルーツの甘さを引き出したそれとアスパラが好相性。ミル貝のフレッシュな食感の緩急もいい。春ですよ、春。

そして今回、目から鱗。素晴らしい一皿がこちら。
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初鰹のタタキに、液体窒素のペルシェドシェーブルのパウダー、朴葉のオイルとエシャロットのピクルス、ピーカンナッツとレーズン。
これが唸ったぁ。なんと「羊肉」の味がするのだ。いや、ほんとに。ペルシェドシェーブルとの化学反応なのだが、この時期フレンチの肉料理なら「羊」に遭遇することが多いだけに、実に面白い仕掛け。一口目は気のせい?と思ってやりすごしたのだが、二口目もやはり羊。ツレのフレンチシェフを見つめると「ですです」と同じ事を思っていたというから、食べ友の心の繋がりが嬉しい。視覚と味覚の平行線。驚きと楽しさのある美味。こういう出会いがあるからレストランって素敵なのだ。

メインは金目鯛。
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これもユニークで過去の「~っぽさ」から「アビス」という店の料理になっていた。
金目鯛と蛍烏賊、チョリソーのピリッとした刺激もあり魚をメインとした店ならではの組み合わせ。後に肉が来ないからこそ、勝負に出る強みというか。今更ながら魚尽くし、を強く意識させられるメインだった。

で、そろそろ甘いもの。
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土台にリッチな焼きたてのアーモンド生地、その上にふわっふわのフロマージュと酸味のフランボワーズソース。やはり肉を食していないからか、最後が生地モノでも全く重さを感じない。むしろ、常にこのくらいのお腹具合でミニャルディーズまで行けるのが理想、なんて思うほど量、質ちょうど良くフィニート。

魚のみ、肉なしという個性の強みとある種の弱みをしっかりと受け止め、「肉料理」を埋める部分をしっかり鍛えてきている印象が逞しくも感じた昼下がり。サービスもスマート。落とした灯りも心地いい。肉なし海フレンチを堪能してしてみてはいかがだろう。

“Abysse”
http://abysse.jp/


著者プロフィール

月刊連載『153.1 × manger』毎月18日公開
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東京生まれ、東京育ち。
いろんなコトしてきました的東京在住人。
主に食、ほか、アート、映画、ファッション、五感に響いたものを写真と言葉で綴ります。