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第十六回 珈琲豆について

前回に引続きコーヒーのことを少し書こうかと思います。今回はSONGBIRDの「珈琲豆」に関してです。
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SONGBIRD COFFEEには、4種類の珈琲豆がある。

京都「六曜社地下店」 焙煎人 / 奥野修
京都「かもがわカフェ」 焙煎人 / 高山大輔
名古屋「吉岡コーヒー」 焙煎人 / 吉岡知彦
岐阜「SHERPA COFFEE」 焙煎人 / 中垣文寿

開業当初から、この4人には「SONGBIRD」をイメージした、オリジナルブレンドの珈琲豆をずっとお願いしている。珈琲の店を始めようと思った時、どうしてもやりたい事の一つに「珈琲は豆の種類ではなく焙煎人で選んでもらう」というのがあった。

そもそも珈琲の焙煎人というものに興味を持ったというか、その存在を知ったきっかけは、前職である「IREMONYA DESIGN LABO」というお店で2008年頃に展開した「KYOTO COFFEE LABO PROJECT」という企画である。ざっくり言えば、確か「インテリアショップが提案する生活と、京都の珈琲」的な企画で、京都の3人のロースターに京都をイメージしたオリジナルブレンドの珈琲豆を焙煎してもらった。この企画で、「六曜社地下店」の奥野修さん、「かもがわカフェ」の高山大輔さん、「KAFE工船」の瀬戸更紗さんに会って、お話をする機会を得た。

当時の僕は、まだ珈琲に少しづつ興味を持ち始めたばかりで、珈琲豆はおろか珈琲自体についてもまだ何も知らないと言ってよかった。恥ずかしい話だが、珈琲豆というものは海外とか国内のどこか大きな工場の大きな焙煎機で大量に焙煎されたものが、流通してるんだろうなくらいの感覚しかなかった。すべての生豆を一つ一つハンドピックする事、それほど大きくない焙煎機で一定量の珈琲豆を、毎日焙煎している事(高山さんに至っては当時から手回しのロースター)、季節や気温・湿度によって焙煎具合を変える事・。 3人のお話を聞いて共通して感じたのは、珈琲へのこだわり、その手間暇の掛け方、ストイックなまでの意思・・・、珈琲に対する誠実さと言ってもいいかも知れない。そして、その自ら焙煎した珈琲豆を自分のお店で、自分の手でお客に出すという姿が、筋が通っていて何だかカッコよかった。

この時初めて、珈琲豆は「機械」ではなく「人」が焙煎しているということを知る。

もちろん、スペシャリティコーヒーのような豆自体の優劣や希少性などをある程度基準にするという考え方もあるが、「誰が」「どんな風に」その豆を焼くかの方に僕は興味があるし、もっと大事な気がした。だから、自分で珈琲を出すお店をやるのなら珈琲豆の種類ではなく「焙煎人」で選ぶようなお店にしたいと考え、現在の4人の焙煎人の方々にお願いすることになった。(その経緯は別の機会に・・)

だけど、こちら側の珈琲に関するこだわりの重さや、薀蓄に威圧されて、緊張しながら珈琲を飲むようなお店にはしたくなかったし、焙煎人の皆さんも、珈琲に対しては誠実ながらも、良い意味で「たかが珈琲」という肩の力の抜け具合があった。「前回はかもがわカフェを飲んだから、今日は吉岡コーヒーで」とか「4人で別々の珈琲を飲み比べしたい」という感じで、珈琲を気軽に楽しんでもらえたら嬉しい。

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左上から奥野修さん、中垣文寿さん、吉岡知彦さん、高山大輔さん(時計回り)

SONGBIRD COFFEEのオープンからおよそ9年間、ずっとこの4種類の珈琲豆、4人の焙煎人の顔触れは変わらない。ご本人には滅多に会えないけれど、珈琲豆を通して毎日会っている。実は、当初は徐々に人数を増やして10人(種類)くらいにしたいと考えていた事もあった。いざ実際に始めてみると、その考えの浅薄さに気づく。預かった大事な珈琲豆を、本当にちゃんと扱おうと思えば、4人でも多過ぎるくらいである。とてもじゃないけど、種類を増やすなんて出来ない。

とはいえ、以前このコラムでも少し触れたが、僕も少しだけ焙煎をかじった事がある。
密かに5人目の座を「焙煎人 / 徳田正樹」として狙っているのだけど、その道のりは遠く、まだまだ先の話になりそうである。


著者プロフィール
月刊連載『月刊 唄鳥』毎月5日公開
icon_songbird徳田 正樹
インテリア・プロダクトデザイナー
SONGBIRD DESIGN STORE.」代表

京都生まれ。大学卒業後、内装会社勤務を経て、1999年「IREMONYA DESIGN LABO」の立ち上げに参加。その後、2008年まで同社のデザイナーと代表を務める。2008年退社後、Masaki Tokuda Design.設立。2009年に、京都でカフェを併設したインテリアショップ「SONGBIRD DESIGN STORE.」開業。