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川床のこと。

 新緑が清々しい季節になったと思ったら、たちまち鴨川の川原が騒がしい。目を向ければ5月1日から始まる納涼床に向けて川床の準備が始まっていて、強制的に夏の扉が開いた気持ちになる。豊臣秀吉の時代、鴨川に床几を出して人々をもてなしたことに始まる鴨川の納涼床。読み方は「ゆか」が正しくて、「かわどこ」と呼ばれる貴船の川床とは簡単に区別がつくようになっている。といっても京都以外の人にとっては迷うだけかもしれないけれど。
 鴨川に沿って流れる禊川の上に作られた床。夏の暑い京都で床はほんとに涼しいの?と聞かれることも多いけれど、2本の川に吹く川風のおかげで想像以上に涼しいというのが私の実感。まだ始まったばかりの5月や、終わりかけの9月など寒くて早々に退散したくなるほどだ。そんな2ヶ月間はよくできたもので昼の床が用意されていて、いつもとは違う鴨川ピクニックができる仕掛けとなっている。川原を歩く人との距離が近くて時々目があうことを除けば、気持ちのいい時間を約束してくれる。
 そしてもっとも多くて、もっとも心を悩ませる質問が、おすすめの店はどこ?というもの。いくら涼しいといっても、うだるような暑さの日にはエアコンの効いた快適な室内にはかなわない。京都で暮らしている分には、やっぱり床でないお店を選んでしまうから20年近く住んでいても経験値は一向に増えないまま…という体たらく。
 結果、ついつい案内してしまうのは〈スターバックス三条大橋店〉。5月と9月は昼床がある時間帯の11時半から、6月から8月は16時から。スタバメニューをオーダーすれば使うことができる納涼床の気軽さは、大きな魅力だ。鴨川はもちろん三条大橋や東山を眺めながら過ごす夏の夕暮れの心地よいこと。数百円で手に入る至福にしみじみ。

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著者プロフィール

月刊連載『毎日くいしんぼう』毎月17日公開
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大和まこ(やまと まこ)

京都在住のライター&コーディネーター。雑誌『&Premium』で「&Kyoto」を連載中。