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“軌跡”

以前にも書いたが、ビルの二階にありながら看板なし、ドアも壁紙とほぼ同じという、入り口どこ?のイタリアン、LACERBA(ラチェルバ)。大阪へ行ったらいかなければね、と再び。

来阪時は丁度独立10周年記念というおめでたWEEK。LACERBAの前身tre lumache(トレルマーケ)時代の料理を限定復刻というお楽しみ期間であった。
とは言え、私はLACERBAからのお付き合いなのでその時代を知らないけれど、昔から郷土料理がべらぼうに旨いイタリアンと聞いていた。それも今回は昔のスタイルのまま「アラカルト」で楽しめるという。

スナックは海老。香ばしさxシャンパーニュでスタート。
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“復活 野菜の盛り合わせ”
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野菜の盛り合わせというけれど、一つ一つ調理法が異なるプチ贅沢が好きだ。肉や魚のように、ここぞ!ではない所で地味に作り込む感。野菜に手をかけるって無条件にシビれる。

鰹のローザマリーナ 茄子添え
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唐辛子、オイル、茄子、そして下には鰹。初めての味だが知っている、と感じるのはナスと唐辛子の麻婆茄子的な所なのだが突如出現する鰹に不思議と違和感はゼロ。しみじみ料理人とは創造性豊かだ、と思う。

牛もつ内臓の激辛煮込み「黒」
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これはやばい。現在のLACERBA同様、料理は少しアンダー気味な表情が持ち味だけれど、根底には問答無用の「旨い」があるという控えめながら仁王立ちのスタンス。辛味の中に甘さがあり、刺激的でありながらまろやか。あとを引くヒリヒリが止まることはないにも拘らず、ソースが美味しすぎてパンで拭う手をとめられない。隣のカウンターの方々は、トレルマーケ時代からのコアなファン。絶対に外せない、と全員がオーダーしたのがこれだった。確かに「もう一度あの味を!」と集うファンがいるのも納得。むちゃクチャ美味しい。

毛蟹のピーチ
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フーフーするほどアッツアツで「あんかけ」を思わせるトロミに旨味たっぷり。藤田シェフの手打ちのパスタは口当たりが滑らかでちゅるんとしながら口の中で逃げずにしっかり噛める。パンと同じように選ぶ小麦で味わいは様々なのだろうが、小麦の粉感が皆無なのだ。質感と食感の関係性に品があるのが最強の持ち味。

最後にはコアなファンの方々のご好意で白と赤のピッツァをおすそ分け。
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LACERBAからしか知らない私にとって、今回全てが「初めまして」の郷土色強いトレルマーケ時代の料理。面白いなと思ったのは、数皿頂いてみると私の知る今の藤田シェフの輪郭がさらにくっきりと描かれたような感覚だったこと。料理はある意味、写真のようなものかもしれない。昔の写真をみて今に重ねる感覚。面影あるよね、のあの感じにとてもよく似ている。これから先どう変わっていくかの楽しみもしかり、偶には遡って過去を再現する楽しさもしかり。トレルマーケ時代からのファンの方々が「それでもどっかLACERBA風だね」と言っていたのが印象的だった。今、昔のそれを作っても昔と同じにならないのが成長、進化の証なのだよね。
時を遡りながら今に至った大阪ダイビルの夜。ごちそうさまでした。

“tre lumache~@LACERBA”
大阪府大阪市北区堂島浜1-2-1 新ダイビル 2F


著者プロフィール

月刊連載『153.1 × manger』毎月18日公開
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東京生まれ、東京育ち。
いろんなコトしてきました的東京在住人。
主に食、ほか、アート、映画、ファッション、五感に響いたものを写真と言葉で綴ります。