Faire le vendange en Val de Loire 3 / ロワール渓谷地方でブドウの収穫をする 3

前回の続き

滞在期間中の土曜日に収穫祭が開催されワイナリーに沢山の人が集う。祭りとはいえブドウ摘みの収穫作業になんら変わりないが一般参加者がいるので普段の倍のスピードで作業が進む。この日に彼らが飼っている馬に会えた。ボワザール一家は馬を使ってブドウ畑を耕す作業をしている。利点は土が踏み固められないので表土に存在する有機物の環境が整い、化学肥料の使用が減るなど。トラクターを使えば作業効率は良くなるが、重機が畑の土を圧迫させてブドウの木の根が地中深くまで伸びるのを妨げることになり土壌の個性がワイン造りに表現できないなど。

また彼らは2006年から少しずつビオディナミ農法を取り入れている。

有機栽培で自然を尊重するために除草剤や殺虫剤、化学肥料に頼らない農法である。

年間の農作業を月の満ち欠け、天体の動きにあわせて行い、生物の潜在能力を引き出して土壌に活力を与えて作物を育てる方法である。また、酸化防止剤(亜硫酸)も瓶詰め前に微量の添加のみで人体に全く問題はなく、ワインを健全な状態で消費者にを提供するために使用している。

この日の作業は和やかな雰囲気で終わり、これから収穫祭の宴会の始まりである。

夕食前のアペリティフに森から拾ってきた栗を焼き栗にしたり、近隣農家からの差し入れのサラミソーセージ、まだ試行錯誤中の発泡性ワインやロゼをふるまってくれた。

夕食はバーベキューだ。牛肉に豚肉と子羊肉、肉が食べれないベジタリアンや宗教上ダメな人のために魚まで準備されて至れり尽くせりの夕食であった。

食後は彼らのワイン貯蔵庫・カーヴの見学である。彼らのカーヴはロワール地方でテュフォーとよばれる石灰岩を掘って作られたもので、掘り出した岩は彼らの家に使われている。入り口で汚れを洗い清めるためか?ぺピット(スポイトのような物)で樽から吸い取った新酒を飲み干して奥へ進んだ。カーヴは年間を通して温度8~12,13℃、湿度90%で菌が住み付きワインを長期保存、熟成に適した空間なのだそうだ。ボワザール兄弟からワイナリー所有の貴重なビンテージワインを我々に振舞ってくれた。ブドウが生まれ育った土地でワインになり、暗くひっそりとしたカーヴで横たわりながら待っていたワインはコルクが抜かれグラスに注がれ空気に触れて複雑な表情を出してくれたワインを僕は嚙みしめるように味わった。

彼らとともに最後まで酒盛りに付き合っていたかったが、アペリティフから飲み続けた僕の体はもう限界だったのでその場を後にして千鳥足で自分の寝床へ向かった。

翌朝の目覚めは気持ち良く朝日を浴びてパリへ出発する列車の時間までゆっくりと時間を過ごした。持てるだけのワインを両手に持って、起きてきた数人のヴァンダンジェとボワザール兄弟とその家族に見送られながらパリへの帰路に就いた。

ブドウの実を収穫するまでには自然に左右されながら人がコントロール出来ることはごくごくわずかであって、僕の職業と違い彼らは一年に一回勝負の大変な職業であると思う。

また飲み物の部類で高額な値段でも取引されるワインの魅力とは何なのだろう。

虜になれば麻薬のように常飲することになるのだろうか。

僕は高級ワイン愛好家やコレクターが好むワインを飲んだ経験はない。

だが、Domaine du Mortier Boisard et Fils、彼らが作るワインは高価なワインではないがヴァンダンジュに参加したことによって思い入れ深く、心から人に勧めて飲んでもらいたいワインだと僕は思う。

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著者プロフィール

月刊『Les miettes de pain』毎月28日公開
icon_mayumi伊藤 源喜(いとう もとき)

京都出身。関西のパン屋さんで就職後、2006年に渡仏。
良い事も、悪い事も受け入れながらパリで日本人妻と生活中。
現在はLa Boulangerie du Nil に在職中。
www.terroirs–avenir.fr