masakitokuda

第十八回 エレファントスツール

今年いっぱいで、今の家を引っ越さないといけなくなったので、ぼちぼち荷物の整理を始めている。何しろ、我が家は荷物が多い。その大半は、以前こちらのコラムでも触れたが、コツコツ集めてきたイームズを中心とした椅子や家具である。

一部を除いて、普段あまり使う事のない他の椅子や家具たちを見ていると、今回の引越しを機に身も心もスリム化を図るため、整理して手放そうかとも考えた。・絶対に、できない。お金は頑張って働けば、また入ってくるけれど、この椅子たちは一度手放してしまえば、同じものには二度とは出会えない。

ただ、無人島にどれか1脚しか持っていけないと言われたら(誰にも聞かれてないけど)どうしようかなぁと、夜中に一人でじっと考えていた。しばらく悩んだ結果、柳宗理の「エレファントスツール」に決めた。(誰にも聞かれてないけど)

あんだけ、好き好きと言っておきながらイームズじゃないんかいと言われそうだが、昔から一番好きなのは、実はこのスツールである。柳宗理と言えば、「バタフライスツール」が有名だけど、僕は断然エレファントスツール派である。なんとも言えない愛嬌のあるフォルム、座面のくぼみ、座面からそのまま床に伸びる3本の脚、小さ過ぎず大き過ぎない絶妙のサイズ感。もちろん、スタッキングが出来る。もうこれ以上、何かを加える事も引く事もできない素晴らしい機能美である。

c_sb18

1956年から製作していたコトブキ社製は、その後生産中止。2001年にイギリスのHABITAT社から復刻されるも、1年ちょっとで販売終了。 2004年からはドイツのVITRA社が復刻しているが、素材が従来のFRPではなくポリプロピレンに変更されている。

当時、生産が終了していたコトブキ社製は、既に高価でなかなか手が出なくて、HABITATから復刻が出るや否や、速攻で3脚注文した。座るのはもちろん、コーヒーテーブルの代わりに使ったり、本とかプランターを置いたり、電球を替える時の台にしたりと、ずっと愛用してきた。

見る人見る人に「お風呂の椅子みたいだね」と言われ続けていたけど、一人暮らししている時、実際にお風呂で使っていた。「まさかエレファントスツールを本当にお風呂で使ってるとは思うまい」と一人、悦に入っていたのが懐かしい。

あまり物に縛られたり、使い切れない家具を持つのもどうかとは思うけど、物に関わることで自分の考えや立ち位置を確認してきた僕にとって、それらはもう家具という機能を超えて、積み重ねてきた日常と思い出の証であり、心の支えのようなものなのです。


著者プロフィール
月刊連載『月刊 唄鳥』毎月5日公開
icon_songbird徳田 正樹
インテリア・プロダクトデザイナー
SONGBIRD DESIGN STORE.」代表

京都生まれ。大学卒業後、内装会社勤務を経て、1999年「IREMONYA DESIGN LABO」の立ち上げに参加。その後、2008年まで同社のデザイナーと代表を務める。2008年退社後、Masaki Tokuda Design.設立。2009年に、京都でカフェを併設したインテリアショップ「SONGBIRD DESIGN STORE.」開業。