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「プロレスブーム その3」

プロレス観戦先月5回、今月5回予定と、すっかりとのめりこんでいるのにはいくつかの理由があると分析している。もちろん個性的な選手の質の高い試合ありきなのだが、それ以外に大きく2つの要素がある。ひとつは選手個人や団体としてのストーリー展開の多様さと、もうひとつはその裏に見え隠れする会社運営としての団体と個人の関係性である。

ある引退した選手が「20年前のプロレス全盛時代は何十人もの志願者の中から一人二人といった候補生を選んでいたが、最近は入門するときの敷居がだいぶ低くなっている。」と話していた。20年前と比べ格段に団体数が増え、興行数自体が増えているわけだから、必然的に選手の数も多くなっており、その選手の数だけストーリーがあると考えれば、その数も相当なものである。その中で選手個人や団体として個性を打ち出し生き残りをかけており、さらに師弟関係をはじめとした様々なバックグランドがあるのだから、その複雑さゆえ初めて見る人にとってはなかなか入りずらいものの、その多様さゆえ一度入り込むと深い沼にはまってしまう人も少なくないようだ。

また300人規模の会場ではリングに近い場所での観戦となり、選手の動きのみならず息づかいまでまで感じることができるのだが、それ以上に見えるものも変わってくる。とくにセコンドとよばれる介添人の働きはその団体や選手のスタンスをよく表している。メインイベントで舞う大量の紙テープを職人芸のごとく手際よく集める若手選手や、場外戦の際に観客をスムーズに誘導し安全な試合展開を進める選手の姿をみると何とも快いものだ。セコンドといえば若手選手やマネージャーなどがつくイメージがあるが、あくまでそれは大規模老舗団体の状況であり、小規模の団体ではメインイベントに出場する中心選手が第一試合からセコンドにつくこともある。個人的な見方としては、団体を中小企業として例えれば第一試合にセコンドにつく中心選手はさながら何役もこなす中間管理職的な存在であり、他団体からの参加選手やフリーの選手はさながら派遣社員のような存在でもある。

ある現役選手がトークイベントで「プロレスですから、言える部分と言えない部分があります」と話していたが、まさにその部分を重ね合わせながら楽しむものだと思う。まだしばらく個人的第5次プロレスブームは続きそうである。

※演出の一つともいえる大量に舞う紙テープ。手際よく集めるのもセコンドの仕事の一つ。
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著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm