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「キートス!ポルヴォー!」

どうやら、
いや、
どういうわけか、
フィンランドの首都ヘルシンキへ旅行に行く日本人が、
以前にも増して、最近たくさんいるらしい。

個人的には、日本の北欧ブームは、
ここ20年近くで2回転くらいして、
今はすっかり落ち着いてしまった印象があるから、
ちょっと意外な気がする。

まあ、
ブームが燃え上がろうが廃れようが、
気にせず、私はフィンランドを愛し続ける。
何しろ、自他ともに認める、しつこくて一途な性格なのでね。

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ということで、
今回は、ヘルシンキをちょっと離れてみたくなっちゃったので、
日帰りで行くことができる街、「ポルヴォー」のお話。

ヘルシンキから東へ50km。
1時間ほどバスに乗れば到着する、古くて小さくて美しい場所。
それが「ポルヴォー」。
フィンランドで2番目に古い都市。

訪れた日は、ちょうど雨が降っていて、
シトシトとした石畳を歩きながら、

「ああ、なんて雨が似合うんだろう!」と、ちょっと驚いて、
「ああ、なんてホッとするんだろう!」と、キュンってした場所。

その理由は、
川岸に建ち並ぶ赤くて古い木造倉庫や、
細い坂道に軒を連ねるパステルカラーの木造住宅やショップなど、
建物のどれもこれもが、こじんまりしているからだと思う。

古い木造の建物には、ペンキを何度も塗りなおした跡があり、
丁寧に大切に、小さく暮らしている様子が伝わってくる。

そんな細い石畳の坂道を、シトシトと歩いていくと、
丘の上には、静かに佇む大聖堂がある。

一般的には「大きい聖堂」だから大聖堂っていうのだろうけれど、
ポルヴォーの大聖堂は大きくないところが良い。
とても「こじんまり」している。
ここ、重要なところ。

その控えめな佇まいが、とにかく美しい。
白い漆喰の壁と、ダークブラウンの切妻屋根。
観光客もいない。
ただ静かで、雨が似合う。
聞こえてくるのは鳥のさえずりだけ。
あ!
木の実をくわえたリスがいる!

ポルヴォーのどの場所から見上げても、丘の上には大聖堂。
この街全体の「こじんまり感」が、私の心をくすぐり続ける。

自分よりも、ずっとずっと長生きをしている古い街「ポルヴォー」。
薄っぺらさが、まったくなくて、
教えてもらえることが、いっぱいある。

せっかくの休暇なのだから、
マリメッコアウトレットの爆買いも悪くはない。

でも、
あえて静かで美しい地方の街を、
ただ歩くだけの旅をしてみるのはどうだろう。

歩き疲れたら、小さなカフェに入ってみる。
大きな自然の中に、身も心も何もかもを委ねてみる。
そんな旅が、フィンランドには似合っていると思うんだけどな。

多分ね、その帰り道。
トゲトゲしていたものが、
いつの間にか取れてしまっていて、
まあるいカタチに戻っている自分に、驚くことになるんだよ。

そして、
バスの車窓越しに、不意に口にしてしまうのだよ。
「キートス!ポルヴォー!」ってね。

 


著者プロフィール

月刊連載『旅のち、たびたび北欧へ』毎月16日公開
prof_shiho伊藤 志保(いとう しほ)

カフェ「istut」のオーナー&厨房担当
自らが買付ける北欧ヴィンテージショップ「2nd istut」も営む
古いモノ、ヨーロッパ、蕎麦、ワインが好き
1969年生まれ 長野市出身