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守ってあげたい

家には車がなかった。
さほど不便も感じなかったし、車のある家を羨ましいとも思ったこともなかった、と思う。
そんな私が運転免許を取得しようと思ったのは、18になってすぐ教習所に通う周りの影響よりも
当時入院していた祖母に「何がしたい?」と聞いたら「桜を見たい」と言ったことだった。
どんな病気だったかは知らないけれど、歩くことが困難になっていたので車に乗せて桜を見せてあげようと思った。
19歳の12月に免許を取得できた。あとは車。桜の頃までに!車を用意しなければ、と思っていた。

車は、自分で買うことにした。
乗りたい車もわからず、新車を買えるはずもなく中古車もどこで買えばいいのかもわからない。
新聞広告や折り込みチラシとかを必死で見たりしていたけれど、ある日の帰り
堀川通り沿いにある車の整備工場の前並べてあった車と貼ってある値段に足を止めた。
車の前を何度も行ったり来たりして「これは売り物ですか?」と声をかける寒い寒い夕暮れだけははっきりと覚えている。
父にも母にも、なんでそこで買うの?と何度も聞かれたけど、自分でもなんでかはよくわからい。
白髪に青いツナギを着た自動車整備のおじさんから、赤い軽自動車を買うことになった。
祖父に借金を申し込み、初めて借用書を書き毎月返す月謝袋のような封筒を作った。
駐車場は、家の近所の不動産屋さんにお願いしに行った。それが3月。

祖母は、桜を見ることはできなかった。同時進行で祖母に編んでいた紫色のちょっきにも袖を通すことはなかった。
今はもう、その車の整備工場さんもその場所にない。
4月、祖母の写真を持たせた嫌がる(怖かったのだと思う)祖父を助手席に狭い後ろに父を乗せて、桜を見に近所を走った。
ほぼ散りかけている神光院の桜吹雪を車から降りず窓から眺めた。

詳しくはないけれど、車は好きな方だとは思う。今までで思い出すだけで8台くらい途切れなく乗り換えていた。
が、この半年ほど諸事情で自分の車がない。
大げさだけど、車を人生や夢に例えるのが好きな私なので、今は森の中の迷子、夢の途中といったところ。
何に乗る?誰と乗る?どう運転する?ちょっとワクワクしている。

試乗モニターに応募しては、ハズレの案内とカタログが送られてくる。
ちなみに、応募したのはポルシエとミニ・・・立派なカタログです。

初めて乗った車の写真を探したけれど、車の中で撮ったものしかなかった。当時20の私と愛猫のキャット。

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ずっと乗り続けたかった車。思い出はいっぱいある。

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最近ハマっている塩パン。ヤマダベーカリーのも美味しかったです。

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守ってあげたい

 


著者プロフィール

月刊『IN THE POCKET』毎月27日公開
icon_mayumiモリカゲ マユミ

「モリカゲシャツの企画・販売係 面白いこと担当」

MORIKAGE SHIRT http://mrkgs.com

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