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“国産天国”

久しぶりのTsu・Shi・Miは相変わらず1日1組のこだわり。全て都志見シェフ一人での作業のためディナー営業のみというまさに一食闘魂。この日も全14皿のコースは圧巻だった。

Introduction~“農園”は都志見シェフのシグネチャーディッシュ
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毎回「おぉ~」とため息の出る畑の小さな巨人たち。ひと口大にも満たない小さな野菜は40種以上。一つ一つ味わいを引き出すために調理法が異なるとてつもない仕込みであると同時に毎回見た目以上に美しく撮れないカメラ泣かせの皿なのだけれど目の前に広がる全体像は友人の向こう側の皿で想像してほしい(笑)。季節ごとに異なる野菜の特徴を把握した上で、この皿をシグネチャーにしていること自体、一種の凄みすら感じたりして、野菜の奥深さを痛感させてくれる一皿なのだ。中心のソースはヤーコンとシナモン。

黒い白菜
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北海道産の生シシャモをペーストにしたものを発酵させたオレンジ白菜に詰めている。中には白ワイン煮のムール貝、そして申し分のない濃厚なイカ墨ソースに上乗せするデュラムセモリナをつけたシシャモフライの香ばしさ。タコの卵巣をハムのようにしてすりおろすという後追いの旨味も素晴らしい。しかも皿ごとアッツアツのアッツアツ。

秋の詩
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この季節ならではのカニ、カニ、蟹。残念なのは香りごとお届けできない事。千葉館山でとれた上海蟹と同じ品種のもくず蟹は身と卵と味噌をあわせたものを菜の花の上に乗せ、紫ペコロスと自家製ベーコン、殻ごと裏ごしした濃厚ソース。秋冬仕様の即体温上昇的な美味しさは、今すぐ冬眠しても春まで安眠できそうだ。

秋筍
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あくまでも野菜が主役という都志見ボス。確かに確かに炭焼きのマコモダケとフリットの食感、旨味、甘みはグンを抜いている。広島県竹原産峠下牛は25日ドライエイジング。肉に負けない旨味を他で表現するというのはその強さを熟知した人にしかなし得ないある種の知識という技術だろう。

甘菜
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デセールも都志見節炸裂。雲南百薬とムカゴ、クコの実にピスタチオのアイスクリーム。ソースは発酵赤紫蘇ジュース。器に美しく塗ってある抹茶をジュースとピスタチのアイスクリームで少しずつ溶かしながらソースのようにして頂く。いや、もうこれが美味しく美味しくてね。残った抹茶の部分に「美味」という文字を削ってラブレターにしてお返しした。

毎度ながら気迫という言葉がぴったりの熱をひしひしと感じながらの都志見プレゼンツの晩餐会。
外食と言ってもなんとなくピンとくるところがなかったり、行く前から想像できてしまって今ひとつ面白みを感じられない外食倦怠期のあなた。
そんな時は都志見ボスのシニアな「粋」を食してみてはいかがだろう。何某かのリセット効果は絶大であります。

Tsu・Shi・Mi
http://www.tsushimi.com/index.html


著者プロフィール

月刊連載『153.1 × manger』毎月18日公開
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東京生まれ、東京育ち。
いろんなコトしてきました的東京在住人。
主に食、ほか、アート、映画、ファッション、五感に響いたものを写真と言葉で綴ります。