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vol.20 引越しのおまけ

先日、自宅の引越しをしました。
荷物の整理をしていると、無くしたと思っていたアクセサリーが出てきたり、洋服のポケットから1000円札が出てきたりと、良いことが結構ありました。
この食器は全く使ってなかったけど新しい家では使おう!など、引越しの荷造りは自分の持ち物を見直せる良い機会にもなりました。

溜め込んでいた昔の仕事の資料の中から、当時働いていたお店の生花を担当されていたお花屋さんとやり取りしたメールをプリントアウトしたものが出てきました。
目を通すと、心のもつれがすーっとほどけていくような、今の自分にとてもフィットした内容でした。

2004年5月17日の出来事。
「芍薬」という花を知ったのもその時だったかもしれません。大きな蕾がどんどん膨らんで、ピンク色や白色のエレガントで美しい大輪の花を咲かせます。
その花をまだ咲いたばかりなのに入れ替えるということで、お花屋さんは私にプレゼントしてくださいました。
その日は1日うれしくて、頂いて帰るのをそれはそれは楽しみにしていました。
しかし帰る頃、置いてあった場所にその存在はなく、他の早上がりのスタッフが持ち帰ってしまっていました。
愕然とした私は、どうにかしてお花屋さんのメールアドレスを入手し、花がなくなっていて悲しかった事と、せっかくいただいたのに申し訳ないというお詫びの連絡をしました。

そして頂いた返信が…。
「それは、さぞがっかりしたことでしょうね、、、
けれどあなたはもっと大切なことを手にいれたのでは?」
と…!!!
「花は花自身の時間を刻んでいるから、日々通りすぎ行くもの。今回のように一瞬で失ってしまう出会いもあれば、花と息を呑むような素晴らしい時を過ごすことだってあります。
花を経験として捉えることが私には正しく思えます。
花を通じて自分の中に湧き起こる感情、それが自分です。
誰かに対して寛容になることができない日があるかもしれない。なぜうまくいかないのかとイライラすることもあれば、人に良く思われたいという事もある。
花の無垢で清らかな姿に心を洗う事は何より意味がある事ではないでしょうか。

「花みたいに自然で、優しくなれたらいいね。」という内容でした。

「芍薬がなくなって悲しかった」というのはほんの些細な出来事に過ぎず、お花屋さんとのやりとりがそれ以上の意味を持って、13年経った今も当時と同じように、再び私の心を軽くしてくれたのでした。あの時どうにかしてメールアドレスを入手し想いをお伝えして本当に良かった。そして真剣にお返事をくださった事が全てで、自分もこんな風にきちんと物事に対して答えられる素敵な大人になりたい!と、これを2018年の抱負にし、2017年の締めくくりにしたいと思います。今年もありがとうございました。

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このプリントアウトしたメールを見つけた2日後、偶然にもお店の隣の隣にあるマンションの大家さんが、屋上で育てているバラが珍しくこの季節に咲いたからと言って、持ってきてくださいました。
大家さんはおじいちゃんで、以前軒先で咲かせておられた際に綺麗ですねと言ったのを覚えて下さっていたのだと思うと、お花をもらった事以上にとっても嬉しかったのでした。


毎月20日公開 月刊『12×Coffeecups』
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とくだ あきこ
ソングバードコーヒー店主
京都出身。
飲食店、インテリアショップを経て、2009年に堀川丸太町にソングバードコーヒーをオープン。