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TATTOO

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小・中と一緒のYちゃんとは、見た目も性格も好きな洋服も全然違う。
私は運動部で真っ黒で短髪な元気っ子のボーイッシュだけれど、Yちゃんは中学校からプチ化粧するような長い髪、美形な帰宅部の女の子だった。
現在なら簡単に連絡も取れるが、昔は高校も離れて生活リズムも変わり自然と離れる可能性もあるのに、
彼女はいつも私を気にかけて連絡をくれていて、付かず離れず仲が良かった。

女子力高めでノー天気で行動力がある彼女は、高校の卒業旅行をしようと言い出して、
控えめでおとなしい中学が一緒だったMちゃんと3人で、北海道に行くことに。
その頃、お金はないが時間だけはあったので、舞鶴港から小樽までフェリーで行き、
小樽 – 札幌 – 洞爺湖 – 登別と時刻表を片手に珍道中。移動はバスか電車で、雪の少し残った北海道を楽しんだ。
帰りのフェリーは小樽から敦賀に着くルートで、行きはまだ元気だろうからと大部屋にしていたけれど(今はないんですね)
小樽でガラスやオルゴールに心踊らされているティーンエイジャーは、
帰りのフェリーは疲れているだろうとベットのあるちょっといい個室していたので、それを楽しみに足早で港へ向かう。

チケットを持っていてくれたのはYちゃんだった。
船は10時30分に出発するからと、10時に港に向かって歩いた。
10時5分、港に自分たちの乗るはずの船は・・・なかった。

10時30分出発だと思い込んでいたフェリーは、10時出発で私達を乗せず出航していた。
旋回して港を離れた船が、少し沖に確認することができた。笑うしかなかった。

慌てて窓口に走って、Yちゃんが事情を説明するも、当時関西へ行くフェリーは1日置きにしかなく、しかも私の残金は650円。
後の2人も3千円か5千円というところで、北海道に留まることも飛行機で帰ることもできない。
事情を理解した窓口の人が「10時30分発の新潟行きに乗ってとりあえず本土へ行きなさい。
部屋は大部屋になるけれど差額を返すからそれで帰れるでしょう」と言ってくれた。
乗り遅れたのは自己責任で、便を変えることはできても返金をしてもらえるはずもないのだけれど、とても親身になってくれた。

手続きをしていたせいで、10時30分出発のフェリーの出航を待たせた私たち3人は、乗り込んだ時針のむしろに座るような気持ちだった。
新潟に着くのは、翌朝5時。帰りの電車の切符を買うまでは、お金を使えないので昼ごはんは我慢した。
夜ごはん時間には、買っていたお土産のお菓子を食べて誤魔化した。
居場所なくロビーのソファーでぼーっとしている私たちに強面のおっちゃんらが
「ねぇちゃんらか、フェリーを遅らせた奴らは」と声をかけてきた。
私とMちゃんはちょっとビビっていたのに、Yちゃんが
「すいませんでした。1本乗り遅れてしもて・・・」とまったりといい感じの京都弁で返事したら
「ねぇちゃんら大阪か?京都か?ご飯食べたんか?今からそこのバーに行くけど、一緒に行くか?」と、誘ってきたのだ。
笑顔で「ご飯食べさせてくれるん?」と聞くYちゃん。「ええぞ、その代わり接待してもらうからな」とニヤリ笑う小さいおっちゃんに
私とMちゃんは恐る恐るバーに入っていく。
「お前歌歌えるか?」と私に、カラオケの本を渡すおっちゃん。「な、何がいいですか?」と聞くと「明菜、明菜」というので
TATTOOを、前のステージで歌い上げた。必死だった。
テーブルに戻ると、Yちゃんはおっちゃんにビールを注いでいた。Mちゃんはおっちゃんらに挟まれ肩をすくめて愛想笑いをしていた。
唐揚げやらフライドポテトやらをご馳走になって、Yちゃんは聖子ちゃんを歌いあげ、
人前で歌えないとMちゃんはずっと小さいおっちゃんの話を聞いていた。
怖いと思っていたおっちゃんらは、大型トラックのドライバーで寝る前にちょっとお酒を飲むくらいだったので、
1時間やそこらで「じゃ」といってあっさり寝に行った。「ごちそうさまでした!ありがとうございました!!」と見送り、

「はぁー疲れたなぁ。でも食べられて良かったなぁ」とYちゃんはソファーに横になった。
「ほんまにー!ビビったけど、いいおっちゃんらやって良かった」と私もホッと一息ついた。
おっちゃんらに挟まれていたMちゃんは、何も言わず同じ状態のままうつむいて固まっている。
「Mどうしたん?」と、顔を覗き込むとMちゃんの頬にツーっと涙が流れていて、「ええ!なんかされたん?」とYちゃんも飛び起きた。

「う、ううん。何もされてへん。いや、されたというか・・・手をな、手をな握られててん」
「あぁ、そうか・・・怖かったなぁ。ごめんな、気がつかなくて」と二人して肩を撫でながら謝った。

「う、ええねん。けどな・・・けどな・・・・おっちゃん・・・小指、小指がなかってん・・・」

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↑ビビりながらも、TATTOOを必死に歌う私(だと思います。誰や写真撮ったん!!)
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その後、Yちゃんは、大阪でキラキラした女子大生に。Mちゃんは菓子の勉強に専門学校に入った。
私は、美大を選び、女子大生と聞いて想像するような感じはゼロ。

先日、娘と友達の女子高校生2人が「合コンがしてみたい」と、ドライブ中に言った。
娘に「かぁちゃんはしたことあるん?」と聞かれて口ごもってしまった。

当時、美大生には「合コンに誘われる」(偏見かもしれません)ということはなかっただけれど、
私はキラキラしたYちゃんに誘われ、たぶん合コンと言われるものに行ったことがある。
携帯もない時代、連絡先を交換した記憶も聞かれた記憶もなく、いつもYちゃんのおまけみたいな体験をしていた。
だから、口ごもってしまったけれど、とても良い経験だった。

今思えば、私に持っていないものを持っているタイプが違う彼女に憧れている部分があって
どんな風に異性と関わればいいか、話せばいいか、甘えればいいかを、いろんな人を見て勉強させてもらった。
出来もしないのに、Yちゃん真似ををして、いっぱい失敗もしたけれどそれも若さというものだ。

「合コンなぁ、行ったことあると思うけど・・・素敵な思い出はないなぁ。けど、出会いの場ではあるよ」と
変なアドバイスとともに、北海道フェリーに乗り遅れる事件の話を娘たちにした。

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思い出の北海道に、今年の4月も仕事でお邪魔します。
モリカゲシャツの「シャツとスカート」展を北海道・札幌のCoinさんで。
初日13日だけですが販売のお手伝いとebebeの受付をします。是非、ご予定お出かけください。

【モリカゲシャツのシャツとスカート in 札幌
Coin(札幌)/4月13日(金)〜15日(日)/11時〜19時*最終日は17時までの営業です。
ebebeの染めかえ受付いたします(藍染めも黒染めもお受けします)

同じ日程で、松江のartos Book Storeでも開催します。

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著者プロフィール

月刊『IN THE POCKET』毎月27日公開
icon_mayumiモリカゲ マユミ

「モリカゲシャツの企画・販売係 面白いこと担当」

MORIKAGE SHIRT http://mrkgs.com

ebebe  http://ebebe.jp