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「ワンダフルなフルコース」

先月、日比谷に「ル・プチメック」さんの新店舗がオープンした。
ほぼ同時期に、東京ミッドタウン日比谷もオープンし、
日比谷の「ちょっと前まで」と「今」は、
突然、違う景色になった。

そう。
東京って、こういう感じ。

あちらこちらで、
あーっという間に、いろんなことが変化していく。

そして昔から変らない建物と、真新しい建物が、
背中合わせに淡々と佇む。
それが東京。
やっぱり面白い。

そんな日比谷から目と鼻の先にあるのが、東京国際フォーラム。

あ。

ちなみに昔は、ここに東京都庁があったことを知っている?
91年に新宿へ移転するまでは、都庁だったの。

その後大規模な工事が行われ、
97年、東京国際フォーラムがオープン。
都内有数の国際コンベンションセンターは、
日々、ライブやら舞台やらシンポジウムやらと、
様々なイベントが開催されていて、とにかく大忙しだ。

この東京国際フォーラムの地上広場で、
2003年から開催されているのが「大江戸骨董市」。
毎月開催という頻度の高さを継続し続けて、今年で15年目となる。

以前のコラムでも紹介をしたことがある、この歴史ある大きなマーケット。
ル・プチメックさんの新店舗から歩ける距離だと分かり、
今回は、そのお話を少し。

うふふ。
だってさ。

ル・プチメックさんの美味しいパンを買いに行くついでに、
このマーケットに立ち寄るお散歩コースは、
私の一押しプランなんだもの。

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このマーケットにレギュラー出店するようになって、
2年目に入った。

江戸開府400年に当たる年にスタートしたことに因み、
「大江戸骨董市」という名前が付いていて、
開催目的は、
「古き良き物の良さを見つめなおし、日本文化を再発見する機会の提供」。
そして、
「人々の交流の場・文化芸術の交流の場の提供」のふたつ。

そう。
よく聞かれるの。
フィンランドのヴィンテージ品を扱っているのに、
どうして「大江戸骨董市」に出るの?って。

確かに、日本の骨董中心でスタートしたマーケット。
でも、古くて良いモノは、海外にもたくさんある。
開催回数を重ねるうち、
次第に西洋アンティークや古着、古書の出店者なども増え、
私のような北欧系も混じるようになり、
様々な国の骨董を通じた、交流の場となったわけ。
もちろん、古物商の資格を有したプロの方ばかり。

なんかね、いいんだよね。
国やジャンルを問わずに、
いろんな出店者が、ゆるくザックリと混ざり合っている、
この雰囲気がすごくいいの。

車で搬入する人も多いけれど、
私の場合は朝6時過ぎ、丸ノ内線に乗って銀座駅を目指す。

普段は人混みで溢れかえっている銀座が、シーンとしていて誰もいない。

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誰もいない銀座って、経験したくてもできない。
それを独り占めできちゃう時間に、ちょっと得した気分になる。

大きな荷物を引きずりながら、静かな銀座を歩いていくと、
やがて見えてくる「大江戸骨董市」の紫色の旗。
この旗が見えた瞬間、ようやくホッとして、
ああ、今日も頑張ろうって思う。

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自分が一番早い到着かと思いきや、
すでにベテランの出店者さんは搬入をスタートしている。
ゆっくりと、いつもの通りに。

ああ。
いいな。
今日も良い1日になりそうだなあ。

「おはよう!」
「よろしくね~!」
優しい挨拶を交わしながら、
日曜早朝のマーケットが始まる。

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魔法瓶のお茶をすすり、
手作り弁当で朝食をとるご年配のご夫婦。
新聞を読んだり、世間話をしたり、飴を配ったり。

国やジャンルは違えども、
自力で見つけ出した古き良きモノを、
良いと思ってくれる人へ届けたい。
その共通の想いを噛みしめながら、真夏でも真冬でも黙々と準備をする。

胸を張って、
「これはとても良いモノなのよ」と、
自分の品物を、愛おしそうに静かに並べ続ける。

この風景がとても好き。

だからこそ、日々大忙しのカフェ営業があろうとも、
月2回のこの「大江戸骨董市」への出店を、私はやめない。

寒くても暑くても、
疲れているのにどうして出るの?って聞かれても、
朝6時過ぎに家を出て、大きな荷物とともに丸ノ内線に乗る。

あの人に、会えるかな。
あのご夫婦、来るかな。
それは、お客さんのことでもあり、
出店している人のことでもあり、
どちらの人たちことも、毎回気になる私。

モノへの想い、人への想い、それぞれが穏やかに交錯する。
これこそが、マーケット(市)の本来の姿なのではないかなあ。

ものすごいスピードで変化し続ける東京。
そのど真ん中で、そのスピードに逆らうかのように、
古き良きモノとともに、のんびりし続ける大江戸骨董市。
とにかく、おススメなのだよ。

ということで、
まずは日比谷で、ル・プチメックさんのパンを買おう。
その足で東京国際フォーラムの大江戸骨董市に寄る。
様々な国の古いモノに触れながら、時空を超えた旅を味わう。
そして、最後は私に会ってみる。どう?

まあ、贅沢だこと!
これぞ、ワンダフルなフルコースじゃない?
どう?

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※大江戸骨董市開催日については、主催者HPにてご確認ください。

 


著者プロフィール

月刊連載『旅のち、たびたび北欧へ』毎月16日公開
prof_shiho伊藤 志保(いとう しほ)

カフェ「istut」のオーナー&厨房担当
自らが買付ける北欧ヴィンテージショップ「2nd istut」も営む
古いモノ、ヨーロッパ、蕎麦、ワインが好き
1969年生まれ 長野市出身