bn_shiho

「部屋とお婆ちゃんと私」

素敵な着こなしをしている人。
美味しそうなご飯のレシピ。
格好いいディスプレイ。
こうなりたいと思う人のライフスタイル。

自分の周りにある「いいな」を、
私は遠慮なく参考にするし、真似もする。
それを、咀嚼して、自分の中に取り入れていく。
どんな事柄も、何かを参考にして進化してきたはずだと、私は思うから。

で、
カフェを作る際、「すごくいいな」と感じて参考にした場所が2ヵ所ある。

開業前、7週間という時間をかけて旅をした北欧諸国。
フィンランド、スウェーデン、デンマーク、エストニアなどを巡り、
ありとあらゆるカフェに入り、店作りの参考になることを探した。

その中で、最も強く惹かれた内装と出会ったのが、デンマークだった。

その場所というのが、コペンハーゲンで借りたアパートの部屋。
入った瞬間に、
「これだ!」って、すっかり心を奪われちゃった。

隣に住む大家さんが、アーティストということもあり、
そのリノベーションの工夫や、やり過ぎていないバランスが絶妙。
シンプル過ぎず、コテコテしすぎず、格好いい。

壁の雰囲気。
途中でやめた塗装。
年季の入った床板。
古い家具。
そして、上手な光の取り入れ方。

これは、もらった!
こういう内装のカフェにしよう!

そう。

パクリじゃないのよ。
大いに参考にすることにしたの。
メモメモメモ。

と、ウシウシしている矢先、
もうひとつ、大きく心を奪われる場所と出会うことになる。

スウェーデンのマルメにある、
小さなデザインミュージアムに立ち寄った時のことだった。

そこに併設されている小さなカフェの風景に、
私は一瞬でやられてしまったのよ。
そしてまたしても、「これだ!」って思ってしまったのよ。

温かい光が差し込む店内で、
お婆ちゃんたちが、のんびりとお茶をしている。
ひたすら自由に流れる静かな時間。
その景色があまりに美しく、しばし見入ってしまう私。

ざっくばらんで、放ったらかし。
優しく漂うコーヒーの香り。
くつろぐお婆ちゃんたちのお喋りは止まらない。

これも、もらった!
こういう空気が流れているカフェにしたい!

そう。

パクリじゃないのよ。
大いに参考にすることにしたの。
メモメモメモ。

こうして、カフェをデザインし、工事をスタート。

大きな窓。
やりっぱなしの塗装。
いろんな人の靴で汚れていく床板。
そして、お婆ちゃんが当たり前にくつろぐ風景。

心に記憶したそれらを、大いに真似て、
「すごくいいな」と感じたあの風景を、きちんと目指してみた。

結果、
私のカフェには、
あの旅で出会った、アパートの部屋とカフェのエッセンスが、
不思議と漂っているのだよ。
もちろん、コピーではないからね。
ほのかに、どこかに、漂っているだけ。

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日本では、
北欧諸国のことを「北欧」と一括りにしちゃうことが多いけれど、
それぞれに違った文化や暮らしがある。
そもそも通貨も、言語も、歴史も異なる国々なのだから、
「北欧」と一括りにすることに、少し抵抗がある私。

現在、自分の仕事をフィンランドに絞っていることもあり、
フィンランド以外の北欧諸国を訪れる機会もぐっと減ってしまった。

でもまあ、そう意固地になるでない。
と、ちょっと反省。

カフェのスタート時には、デンマークやスウェーデンから、
たくさんの良き参考ブツをもらってきているじゃない。
そして、実際に取り入れたのは、それらの国のものじゃない?

このコラムに使う画像を選びながら、
あら、素敵!またコペンに行きたいわあ~、
ストックホルムって、やっぱりオシャレだわ~、
と、脱線しまくって、作業はちっとも進まないわけで、
結局、どの国も好きで仕方がないんだから。

そう。
これからも。

人であれ、モノであれ、食であれ、生き方であれ、
好きだな、と思えることは遠慮なく参考にし、真似をしていこう。

どんな国であれ、街であれ、
「いいな」と思える風景を、
素直に受容し糧とする、柔軟な心を持ち続けていこう。

そのためにも、私に旅は必須なのだよ。
あ~。
旅に出たい!

 


著者プロフィール

月刊連載『旅のち、たびたび北欧へ』毎月16日公開
prof_shiho伊藤 志保(いとう しほ)

カフェ「istut」のオーナー&厨房担当
自らが買付ける北欧ヴィンテージショップ「2nd istut」も営む
古いモノ、ヨーロッパ、蕎麦、ワインが好き
1969年生まれ 長野市出身