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“カタヤブリニヒタルヨル”

住所電話番号非公開、貸切不可、電話予約不可、この店の予約をとるにはFBでオーナーのOgawara Osamuさん(通称ダンボネ氏)と繋がることが条件、そして来店は基本お一人様、MAX2名までというとにかく型破りな話題の新店、東京和食五十嵐。
こんな条件であれば、1人だし誰も知らないしの不安がつきものだけれど来店前からSNSを通じて深く繋がることで不安未知数ゼロ。「大丈夫、僕がついてるから」さながらのダンボネ氏のおもてなしが心丈夫。とは言えコンセプトからしてこの店に集うオトナは一人でも渡り合える年齢であったり境遇の方ばかりなわけだけれど、それでも心の友を求めてとでも言おうか、15席のカウンターはそんなステキなゲストでキリリと整っていた。肝心のお店の場所は、ゲスト一人一人にメッセンジャーで伝えられ、ビルの1階でダンボネ氏がお出迎え。食事は8時一斉スタート。コースはペアリング込み税別4万円。
内装はダンボネ氏の私財を投じて贅を尽くしたこだわりの造り。呼吸をする漆喰の壁効果で店内の空気が実に澄んでいる事に驚く。

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【焼きふぐ白子の茶碗蒸し】
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ふぐ白子に炭火でじっくりと火を通し、うすい豆のすり流しと茶碗蒸しにキャビア。温度感も素晴らしい。

【ダンボネプレート】
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こちらはおつまみプレート内の一皿。3種類が常に自分の前にあり、おかわり自由。コレは食べる量やスピードが人によって異うことへの配慮。ダンボネさんの器の目利きも楽しい。それは本物を知ったそれであり、若手作家発掘にも力を注いでおられる。

【海老しんじょ】
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「五十嵐」のスペシャリテ。この海老しんじょの味わいは、吉兆から青柳(店主小山さん)から小十(店主奥田さん)と継承され、そして今「東京和食 五十嵐」で完成の時を迎えているんだそう。ゴロっとしたエビの食感と旨味、しんじょの美味しさ、命ともいえる澄んだ吸い地の味わいはうっとり。

【五十嵐の「肉料理」三種】
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土佐赤牛の三角ばらカルビを醤油粕で漬けたものを黒胡椒で。楽し過ぎる但馬牛の肉巻きTKG(卵かけご飯)。ひと口で頬張る時にこぼしてしまい、白いブラウスを汚してしまったのだけど、その時の対応が素晴らしすぎまして。買ったばかりのトップスでしたがシミにならずにすみました。ありがたや。最後は山形県黒毛和牛のハラミを玉ねぎと黒酢とはちみつで作ったソースでステーキ風に。どれも濃厚な旨味たっぷり。一口大が計算高い。

【雲丹と白海老の手巻き寿司】
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羅臼馬糞雲丹と白海老の手巻き。こんな風に手渡されてご覧なさいな。テンションあがらないほうがどうかしています。

【十割蕎麦】
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シメは蕎麦粉100%。これが無茶苦茶美味しい。つややかなこし、喉越し共に最高でツユは特製ゴマだれとノーマルの2種類。当然、蕎麦はおかわり必至。そして嬉しいお土産はこの蕎麦セットでした。日もちを考えて二八。完璧でしょ。

料理長は小十出身の五十嵐大輔さん。料理は考え抜かれ気持ちいいほどに隙がない。そしてそこにウイットな花を添える名MCダンボネトークこそ、この店の「核」と言っていい。料理を振る舞いながらの彼のトークは人並み以上の説得力をもち、言霊となって料理の付加価値を高める様はお見事というしかない。スタート時の宣言通り、三時間ぴったりのコースは、料理もフリートークの間合いも含め全て計算され制御されている。
毒にも薬にもなる超絶楽しい語りをさらりと包みこむ懐の深さが五十嵐さんの料理にはある。この二人のタッグは必然であったのだな、と思えた。

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もうひとつやってくれるぅ!な事は、お行儀が悪かったり、酔って大声を出したり、仕切りたがったり、乱れが過ぎるお方はお代を戴かずダンボネ氏のジャッジでお帰り頂いているんだそう。そして既に出禁の方も、とどこまでも型破りではあるけれど、同時にゲストを守ってもいるのだよなとも思う。ダンボネ氏はゲストのデータベースはきっちり頭に叩きこんでいると言い、あの人とこの人は合いそうだ、と考えながら、予定の調整やお席を決めたりもするんだそう。ここはある種、ダンボネ氏のフィルターのかかった社交場でもあるのだな。
大人になって新しい友が作りにくい中、ここではもしかしたらそんな友に出会えるかもしれない。
この店の予約がとれたら、まずはすべてを委ねよう。それがこの店を楽しむ一番の作法であるはずだから。

東京和食五十嵐
電話・住所非公開


著者プロフィール

月刊連載『153.1 × manger』毎月18日公開
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東京生まれ、東京育ち。
いろんなコトしてきました的東京在住人。
主に食、ほか、アート、映画、ファッション、五感に響いたものを写真と言葉で綴ります。