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アイドルを聴いています。

アイドル音楽というものと縁がない10代だったので、アイドルを面白いと思ったのはこの数年のことだ。いやもちろん自我が目覚める前に好きだったアイドルはある。初めて買ったレコードは風見しんごの涙のtake a chanceだったし(ブレイクダンスの教則本も買っていたらしい…)、中学生の時に深夜ラジオにはまっていたので伊集院光のオールナイトニッポンから誕生した架空のアイドル芳賀ゆいの8cmCDを買ったりもした。今にして思えば芳賀ゆいも編曲に小西康陽が絡んでたりするのが何というか自分ぽい好みだなぁと思う。とにかく年頃の頃にアイドルを聴くことが無かったので、アイドル音楽との付き合い方の距離感が未だにつかめていない。

アイドルを聴き始めたきっかけは、自分が若いときに好きだったミュージシャンたちがここ10年くらいの間に楽曲制作に関わること多くなったことだった。やけに自分好みのアイドル楽曲が増えたので聴かざるを得なかった、といえばそれはいいわけだろうか。別にアイドルを聴くことにいいわけする必要もないのだけれども…。単純に可愛い子が歌って踊るのを見るのが楽しいと言えた方がいくらかよいだろう。こじらせたおじさんというのは実に面倒くさいものだ。

最近のVIVID SOUNDがすごく面白い。インディーレーベルながら大手でありユニークなポジションの老舗レコード会社である。そこの若手女性アーティスト枠を支えるのが、星野みちると脇田もなりだ。星野みちるはAKB48出身のシンガーソングライターで、一度このコラムでも紹介した。一方の脇田もなりも大阪のアイドルグループEspecia出身のシンガー。二人ともソロデビュー後にシンガーとしての魅力を開花させアイドルシーンのみでなく広く音楽ファンに評価を受けている。こうなるとこじらせたおじさんは盛大に好きを公言できるのでありがたい。可愛い女の子が歌って踊っているのは一緒なのに…、笑。

iTunesやらYoutubeやらから適当に選曲しながら仕事をすることが多いが、選曲に詰まるとついつい脇田もなりばかりかけてしまう。しかもYoutubeだ、笑。二画面モニターを繋げて仕事しているが、片方はもなりが歌っている。もう可愛くてしかたないのだ。マイクロスター、冗談伯爵といったシティポップな作家陣や、福富幸宏なんていうハウスレジェンドが手がけてる最高すぎる楽曲。小さい身体から想像つかないパワフルで伸びやか、とにかく上手い歌唱力。脇田もなりを最高たらしめている要素は沢山ある。沢山あるけれども、それらもわずかな要素でしかないと思えてしまう。脇田もなりの魅力は歌ってる姿だ。歌うことを夢見ていた少女が、夢を実現させた喜び、そして歌うことの楽しさが全身から伝わってくる。そして見ているこちらまでとにかく楽しい気持ちにさせられるのだ。たぶんそれこそ彼女の持っているアイドル性なのだろう。

アイドルにはまる音楽好きが多い理由がよくわかる。今まで好きだった音楽に、可愛いの要素がプラスされるのだもの。勝てない。今まで素晴らしいアイドル楽曲の多くを聴き逃しているであろう事が後悔でしかない。食わず嫌いはもったいないですね。

ディスク紹介:c_siphon25-2
脇田もなり 「TAKE IT LUCKY!!!!」(VIVID SOUND/2018)

 


毎月22日公開 月刊『片隅の音楽』
icon_siphon宮下 ヨシヲ
グラフィックデザイナー
Siphon Graphica(http://siphon-graphica.net/)主宰

1976年、愛知県豊橋市生まれ。グラフィックデザイナー、ブックデザイナー。高校生の頃より英米インディー音楽に傾倒し、大学在学中にZINE制作を始め音楽誌に音楽ライターとしてキャリアをスタート。自ら雑誌制作の全ての行程に関わりたいとデザインを学び出版社、広告デザイン会社を経て、2008年サイフォン グラフィカ設立。2013年浜松に事務所を移設。現在はブックデザインを主なフィールドとしながら、ショップなどのトータルデザイン、パッケージなども手がける。

イラストレーション:akira muracco(http://akiramuracco.me/top