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第二十七回 スタッキングチェア

引越後の、永遠に続くかと思われたセルフリノベも半年経って何となく出口が見えて来ました。登山で言えば、8合目といったところでしょうか。よく知りませんけど。それと並行して進めている荷物の開梱と整理や配置は、まだまだこれから。登山で言えば、山に向かって家を出たところくらいです。

そんな中で、今一番頭を悩ましているのは、家具の置き場所というか収納の方法です。以前も書いたように、僕はイームズを中心とした椅子なんかをコツコツ買い集めていて、もう20年ほどにもなるから、まあ結構な数になってます。今までの家には入りきらなかったので、コーディネイトを装って、しれっと売り場に置いてみたり、カフェで無理やり使ってみたりして、何とか凌いできました。

イームズの椅子の多くは、シェルと呼ばれる座面部分と脚が、互換性を持たせるためボルトで固定されているだけで、簡単に取り外すことが出来るので、まだコンパクトに収納できるんですけど、その他のタイプは分解も難しく、上に積み重ねることが出来ないので、必然椅子の分だけ場所を取ります。広大な床面積があれば、すべての椅子を並べておきたいのですが、中々そうも行きません。

そんな中、その機能性に改めて感心させられているのが、イームズのスタッキングチェアです。厳密には、スタッキングベースと呼ばれる脚とそのシステムなんですけど、簡単に言えば縦に何脚も積み重ねて収納が出来る上に、横にも連結していける構造の椅子です。何千、何万という数が大量生産され、使用される場所も学校やオフィス、公共的な場所を想定した場合、必然的に収納をコンパクトにするためにデザイン・開発されました。

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僕がこのスタッキングチェアを好きな理由も、イームズの家具の大きな特徴でもある1940~60年代あたりのアメリカにおける低コストのための規格化&大量生産という背景を象徴しているような気がするからです。昔の映像や資料なんかで見かける学校や体育館、オフィスの食堂なんかにこのスタッキングチェアをはじめとしたイームズの椅子が大量に置かれている光景からは、当時のアメリカの勢いだったり、自由な雰囲気や生活の豊かさなんかが伝わって来ます。そんな感じが大好きだし、なんとなくずっと憧れています。

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今でも大量生産・大量消費への憧れはずっとあるのですが、これだけ多様化し選択肢が増えた家具業界というか供給サイドと、受け手であるユーザーの求めるものがどんどん個別化され、より細分化している現代では、中々そうは行きません。そんなこんなで今自分は、イームズなんかとは対照的なやり方、受注生産といった方法を取ったり、オーダーメイド家具を中心とした仕事をしていることも必然なのかも知れません。

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当時の映像や資料を見てると30脚くらい積んでいる危ない写真とか見かけますけど、一応オフィシャルには最大14脚まで積み重ねが可能だそうです。さて、どこまで集めることができるでしょうか。


著者プロフィール
月刊連載『月刊 唄鳥』毎月5日公開
icon_songbird徳田 正樹
インテリア・プロダクトデザイナー
SONGBIRD DESIGN STORE.」代表

京都生まれ。大学卒業後、内装会社勤務を経て、1999年「IREMONYA DESIGN LABO」の立ち上げに参加。その後、2008年まで同社のデザイナーと代表を務める。2008年退社後、Masaki Tokuda Design.設立。2009年に、京都でカフェを併設したインテリアショップ「SONGBIRD DESIGN STORE.」開業。