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音楽のキキカタ(その1)

音楽が好きだという20代の後輩が、「CDよりもYouTubeのほうが音が良いからCDを買って聞くことはほとんどない。」と話すのを聞いて、最初は?と思っていたが、詳しく話を聞くうちになるほどと感心した。
「音楽を演奏するため」「音楽を聴くため」「音楽を作る(録音する)ため」の空間を設計するという職業柄、クラシックのバイオリニストのレッスンルームからロックのドラマーのリハーサルスタジオ、オーディオマニアのリスニングルームまで、床は花梨材の無垢フローリングにしてほしいといった要望や、できるだけ響きの少ない環境が良いといった要望など、クライアントの要望は様々でそれぞれこだわるポイントも多様である。特にオーディオ一式で軽く一軒家が建つほどの機材を揃えるようなオーディオマニアのこだわりは非常に強く、打合せでは部屋の形状や仕上げの素材は当然のこと、壁内配線に使用する電線の種類を指定したり、医療用やオーディオ用のコンセントを指定することもある。こんな話をすると「CDはデジタル信号なんだから、電線1本、コンセント1個で音が変わるはずないでしょ。」と言われたりもするのだが、CDは読取りの際、内部エラーが起こっておりそれを常に補正しながら再生を行うため、安定した電源供給も重要な要素となり、ハイグレードなオーディオで再生すると、実に聞き方のポイントをきちんとおさえさえすれば、電線の種類の違いやコンセントの違いでどのように音が変化するのかを多くに人に解ってもらえる。だからマニアたちは一つ一つ試行錯誤しながら、CDに記録された音の細部までオーディオで再生することにこだわり、「原音再生」をめざしている。
ところでこの「原音再生」読んで字のごとくではではあるが、「原音」というものの定義についてはいくつか意見があり、「CDを録音している時の音」と捉えられることもあれば、「CDに記録されている音」と捉えられることもある。この捉え方の違い自体が非常に興味深い。(つづく)

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※写真は医療用コンセントと200V用コンセント。

 


著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm