bn_shirotsuki

ライター、時々、店主。

或る日、私は店を始めた。

店名は、好事家 白月
日本語では<びゃくげつ>とか、<はくげつ>と読むのだけれど、うちは<しろつき>。
店は友人が新たにオープンすることになったkeiokairaiの中にある。
建物は3階建てで、1、2階は彼らのショップがあり、3階の小さな部屋が私の持ち場だ。
「ここで店を始めてみない?」という、keiokairaiのオーナーのお誘いに乗ったのだ。
あまり深く考えずに(それはいつものことだが)

私を誘った彼らは、かつて一乗寺でsalmiakkiというフィンランドショップを経営していて、その道のプロだが、一方の私は買い物好きなだけで、売る側は未経験。
そりゃそうだ、私の本業はライターなのだから(多分)
それを当分変える予定はないため、自分の仕事の合間に店を開けることになる=不定期営業。
こんなド素人が、勝手都合で店を開けたところで、お客さんが来てくれるんだろうか?
はなはだ疑問である。

店を経営している数人に少し話してみると、「止めた方がいいんじゃないか?」、「店の経営を甘く見るな」とやはり心配の声が上がる。
まあ、やっぱりそうなるわなぁ。
「なんで本業があるのに、わざわざしんどい思いをしてまで店をするの?」という意見に、自分でも何でだろうと考えてみた。

そもそも、keiokairaiのオーナーが私を誘ったことには理由がある。
建物の3階には私の店と共に、2つのギャラリーも併設されおり、ここを一緒に運営して欲しいという。
私は人に「あなたの職業は何ですか」と聞かれれば、ライター・編集と答えているが、実際はブランディングやカタログのイメージ立案などもあり、実質的に<書く>ことは一部分でしかない。
仕事の多くを占めているのは、<編集>という作業に思う。
<編集>とは、「出版業界などにおいて企画をたて、一定の方針に従い素材を収集し、それらを整理して構成すること」と辞書にあるが、広い意味でこの作業はあらゆるジャンルで行われている。
例えば、新製品の商品企画では、顧客のニーズやトレンドといった情報を収集して整理し、それをメーカーのノウハウや方針に照らし合わせて企画を立てる。
二次元か三次元の違いがあるが、雑誌の特集企画とさほど差がないように思う。

だから、ギャラリーや店の運営という新たなジャンルの編集作業は、どんな風になるのか?
興味がそそられ、ちょっとハラハラする。でも、想像がつかないほどリスキーでもない。
それが、私が店を始める理由だ。

しかし、店に立ってみて気付いた。
普段の私は、企画をしたり、原稿などを制作したところでギャラが発生する。
でも、ギャラリーや店の運営は、さらにそこから続きがあるのだ。
展示会や店のためにいろいろと企画をするだけでなく、仕入れなどを行い運営しなくてはならない。経費を除いて最終的に手元に利益が残れば、それがようやく私のギャラとなる。
何がどれだけ売れるかなんて予想でしかないわけで、さっぱり分からないし、売れる保証もない。

編集作業のその続きって、知らないぞ。
あれ? 想像以上にリスキー…かも。

振り返っても、時すでに遅し。
6月21日、店は開店した。
結局、想像以上に何もわからないままに、店主一年生。
ともかく、みなさんよろしくお願いいたします。

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著者プロフィール
月刊連載『或る日。』毎月20日公開
prof_shirotsuki内藤 恭子
ライター・編集などの仕事をしながら、不定期にオープンする<好事家 白月>を主宰。
https://www.instagram.com/shirotsuki_kyoto/