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古きも新しきも一括りする「カフェ」の大らかさ

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『Olive』1998年9/18 「決定!カフェ・グランプリ。」
『Olive』1999年10/18(400号記念超特大号)「全国カフェ・グランプリ。」

 連載を始めるべく、本棚から引っ張り出した雑誌の中で、一番古い年代がちょうど20年前の1998年、99年の『Olive』、「カフェ・グランプリ」特集号。その頃から、ジャンルを問わず雑誌は買ってきた口ですが、別にオリーブ男子だったわけではなく(もちろん少女であるはずもなく)、あくまで特集タイトルに惹かれてのこと。『Olive』を買ったのは、後にも先にもこ2冊きり。自分が知る限りでは、この後に続くGP形式のカフェ特集の草分けないでしょうか?
 98年版で、東京・関西から選ばれた映えあるGPは、京都の「Café DOJI」。準GPは、こちらも関西から大阪の「Contents Label Cafe」。そして、この中では唯一現役の鎌倉「Café Vivement Dimanche」。全国誌にも関わらず、2店を関西が占めたことに、ちょっとびっくりしたことを思い出します。
 ちなみに、98~99年は、関西に「スターバックス」が初上陸した時期 (98年大阪、99年京都・神戸)。それまで東京にしかなかった「スターバックス」や「オーバカナル」は当時、憧れの存在でしたが、3年遅れで海外からの波が到来。そんな中、関西の新しいカフェは数こそ少ないながら、インパクトのある個性派が存在感を発揮していた印象です。
 77年創業の「Café DOJI」は別格として、90年代に現れた主な顔ぶれは、京都で「efish」「Café Independent」。大阪に「Contents Label Cafe」「シャムア」「Café GARB」、神戸に「アリアンスグラフィック」「マザームーンカフェ」「シェブロンカフェ」「TOOTH TOOTH」といった面々。今やカフェの中では定番を超えて老舗の域、中でも「efish」や「アリアンスグラフィック」は、もはや“名所”に近い存在です。個人的には、よく足を運んだ「Contents Label Cafe」は、当時としては間口が広い、街のたまり場として得がたい場所だっただけに、失われたのがつくづく惜しまれます(その後、「millibar」として移転再開)。
 再び誌面に戻ると、GPに続いては東京編、関西編に分かれてのお店紹介。両方の見出しを並べてみると…
「おなごみとおいしいデリ、のよくばりスタイルが人気 おしゃれカフェの進化形、見つけた!」(東京編)
「この店に引きつけられるのはなぜ? ふらーりとお茶してしまうカフェ」(関西編)
 東京ではすでに「進化形」が現れているのに対して、関西が何ともざっくり括られているのは、地域差やブームの時差を感じます。東京編では、当時の「進化形」として「デリ併設」「アジアン系」「自然光ナチュラル系」「ショップ併設」の分類で紹介。今ではありえないですが、お店のグッズ紹介にマッチが健在なのは時代ですね。
 一方、関西編は冒頭の見出し通り、ジャンルも幅広く新旧混在。最新店もあれば商店街のお茶屋さんあり、ジャズ喫茶あり、アジアンブームの影響かチャイ推しの店もあり。さらに「進々堂」や「ソワレ」、「平岡珈琲店」などの老舗喫茶の中に、惜しまれつつ閉店した神戸の名店「Cotton」の佇まいとマダムの姿があり、これにはちょっとこみ上げるものがあります。
 翌99年版では、札幌、仙台、名古屋、福岡とエリアを広げて「全国カフェ・グランプリ」に。グランプリは再び東京・関西からの選抜で、またもGPは関西から、神戸の紅茶専門店「MADO MADO」(現・「マヒシャ元町店」)。まさかの2年連続関西推し!? というインパクトが強かったですね。準GPは東京から「neuf cafe」と「Cafe &BOOKS」。いずれもビル中、街なかにちょっと隠れた“お部屋感覚”の店の顔ぶれは、前年版に比べて、当時の典型的なカフェのイメージを体現しています。
 また、前年度版と同じく、東京の最新トレンドとして、「ショップ併設系」「グッドロケーション」「ベーカリーカフェ」「クリエイター御用達サロン」と続きますが、目を引くのは単独ジャンルとして「純喫茶」が加わったこと。昔ながらの喫茶店も「カフェ」として再評価されたのは、このブームの隠れた余波だったと、今になって実感します。一方、関西は今回もやっぱり新旧織り交ぜて。神戸の「エデン」や大阪の「ムジカ」、さらに京都では「まる捨」(閉店)に、日本茶の「一保堂 嘉木」もあり、今ではなかなかお目にかかれないミックスぶり。さらに東京・関西以外にも、読者のおすすめとして各都市のお店が紹介されていたのも新鮮でした。
 今でこそカフェは雑誌の特集テーマとしては大定番ですが、改めて振り返ると、ジャンルとしてのカフェの登場がいかに画期的だったかが伝わります。要素が細分化された今よりも、古きも新しきも一括りにした特集からは、当初「カフェ」が持っていた、大らかさみたいなものが伝わってきます。ただ、このGP、「恒例の」と謳っていたものの、なぜか開催が2回で終わってしまったのが残念でしたが…。


著者プロフィール
月刊連載『棚からプレイバック』毎月7日公開
icon_amaniga田中慶一(たなかけいいち)
珈琲と喫茶にまつわる小冊子『甘苦一滴』(@amaniga1)編集人。
1975年生まれ。関西で文筆・編集・校正業の傍ら、コーヒー好きが高じて、喫茶店の歴史から現在のカフェ事情まで独自に取材。訪れたお店は新旧合わせて900軒超。現在、全都道府県1000軒訪問を目標に活動中。2013年から「おとな旅・神戸」http://kobe-otona.jp/ で、コーヒーをテーマにした街巡りの案内人を務める。2017年に『神戸とコーヒー 港からはじまる物語』(神戸新聞総合出版センター)http://kobe-yomitai.jp/book/518/ 制作を全面担当。『甘苦一滴』のバックナンバーDL販売はこちらhttps://amaniga.base.ec/ 。