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“撚るほどにチャーミング”

旅に出ようと思う時、頭に浮かぶのはいつも会いたい人がいる店なのだけれど、今回は新規開拓。新幹線が通り、行きやすくなった北陸。宿題だったレストランへ伺った。

その名は『SHÓKUDŌ YArn』。外からは一切中が見えないスタイリッシュな建物。もともとこの場所にあった撚糸工場を再生、糸になぞらえて様々なエッセンスを撚り合わていくことで、石川でしか表現できない料理を創造して行きたいという思いから名付けたんだそう。食材もほぼ石川県産の食材を使用している。
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アミューズはしっとりと「和」を思わせる練り切りとハモンイベリコベジョータ熟成44カ月と抹茶&ソーダの抹ヒート。
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無駄な物が全く無いスタリッシュな空間。空気がピンとはりつめ、凛とした中で次を待っていると、出て来たのはなんとコンビニでアイス買ってきたよ!という面持ちのビニール袋。これ最高に楽しいでしょう?
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半透明のビニール袋にはLAWSONならぬYARNSONと言うシールが貼られ、透けて見える瓶にはHaagen Dazsをもじり、Yarngen Dazsと書かれている。おまけに木製のスプーンまで作っている徹底的な遊び心。完璧。
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しかもこれが能登牛A5 の牛スジ煮込みのムースでネギと一味もきいている。笑っている場合じゃない。すごく美味しい。

そしてこの一皿には驚いた。
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なんの変哲もない焼きとうろもこし?と思っていたらスプーンで頂く朝採れ炭火焼きとうもろこし100%。栗きんとんのような滑らかさと丸ごとトウモロコシがギュギュッと詰まったひと皿。美味しさプラス、楽しませるためだけの緻密な造形。すごいよね。
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「君がムスーっとしたサラダ」
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可愛かったのだよね。ネーミングの「君」は底にある黄味酢、「ムスー」その黄味酢のムース。細かく砕いたマカダミアナッツとカシューナッツ、カリフラワーとブロッコリーにお出汁をしみこませた能登島赤土野菜NOTO高農園の無農薬野菜の混ぜるサラダ。米田シェフがテーブルで盛りつけてくださる。フォトジェニックでありながら見掛け倒しではない美味しさ。全然ムスーっとなんてしない。むしろ、大いにハッピーだ。

「今日のお肉にソース、はずんだよ!」
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能登放し飼いで育った豚の肩ロースと、茶豆(ずんだ)のソース。そう「、」句読点の位置をずらすと「今日のお肉にソースは、ズンダよ」となる。そう、ズンダのソースなのだ。ここまで来るともうメニューの名付けも「よくぞここまで」と賞賛したい。豚の肩ロースは真昆布で覆って一晩昆布締めし、塩を加えずその旨味だけ。金沢のリンゴの枝で炙って香り付けしてある。自家菜園のニラの花をあしらって。

「おれが〆たぬき」
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おかわりできるくらいに欲した。美味しかったのよ、これが。追い鰹の出汁でシメのたぬきは富山の氷見うどん。メニューの〆はひらがなの「の」に似ていることからオレガノ、たぬきとなる。オレガノを天かすの生地にまぜこみエクストラバージンオリーブオイルで揚げ、出汁は、アゴ、イワシ、地元小松市のトマトの軽い酸味。オレガノ、トマト、オリーブオイルというイタリアンをたぬきうどんへ昇華させたYarnオリジナルの〆うどんだ。

「ごま3」
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勘のいい方なら察しているだろう。そう、「ごますりー」だ(笑)。国産小松市の黒ごまを3パターンにアレンジ。黒ごまのアイス、作りたてのゴマのくずきり、ゴマのサブレ。よもぎやきな粉で苔にみたてている。希少価値という国産小松市の黒ごまは、香りが優しい。

そしてミニャルディーズ。
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楽しかった、美味しかった、が今までには無い楽しかった、美味しかっただった。メニュー名の楽しさもさることながら、おふざけ感を強みにする味わいが料理の中にしっかりとあり、それがとてもチャーミング。いくらふざけても育ちの良さが出てしまうステキな子(レストラン)という印象だった。また必ず来たいな。今度は季節を変えて空から白いものが降って来る頃に。コンビニ袋の中身がYarnzakiの肉まんになっていたらいいな。

SHÓKUDŌ YArn
http://shokudo-yarn.com/


著者プロフィール

月刊連載『153.1 × manger』毎月18日公開
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東京生まれ、東京育ち。
いろんなコトしてきました的東京在住人。
主に食、ほか、アート、映画、ファッション、五感に響いたものを写真と言葉で綴ります。