bn_shirotsuki

廃番寸前の私。

或る日、使っていた手帳が廃番になっていた。

ああ、またか。
こんなことは、珍しくない。
愛用品を久々に買い換えようとすると、廃番になっていることはしょっちゅうある。
どうやら、私が愛したものは、大半の人々からは支持されないか、もしくは生産に何か難があるのか。
とにかく、「ガンガン売れてまっせ」な定番品をまたいで、棚の隅にあるモノに目を輝かせていることが多い。

私が選ぶものは、人から「え? それってそんな値段するの? ブランド品でもないのに?」と、呆れられることも多い(いや、まあ、ほとんどか)
でも、ブランド品ではなくとも、その価格に値する理由がゆえに私は満たされる。
そもそも、ブランド品なら高くても仕方ないという納得のしようが、私にはちょっと引っかかる。
モノの値段は他人が決めたものだが、価値は自分で決めたい。
だから使ってみないとわからない作り手の創意工夫だったり、贅沢な材料を使っていたり。
それらに共感し納得すれば、そこに価値を見出し愛用する。
だがごく一部の友人たちが理解を示してくれるが、共感を得られることは少ない。
言い換えれば、私の価値観やセンスは、多くの人には共感されないということだろう。
あれ? それって物を選ぶ店主としては、まずくないですか?(かなりまずい)

しかし、思い返してみれば、私が好きなブランドや作り手は、多くの人に支持されている。
ただ、私が選ぶアイテムに問題があるらしい。
私が選ぶその1点が、廃番になりがちなのだ。
選ぶセンスがあるのかないのか??

私が営む白月に「私にとって価値がある、大好きなモノ」を選んで、店に並べているが、バンバン売れたりしない。
モノの価値は、人によって違う。
違っていいし、それが自然だ。
今までその違いを気にしたことはない。
でも店を営む以上は、お客である人々に「それ素敵。買いたい」と、私が選んだモノの価値や魅力に共感してもらわないと、店として成り立たない。
廃番指名人ごとき私の趣向で選んだモノが、一般的に支持されるのか、想像すると結構分が悪い。
じゃあ、私の趣向はさておき、より多くの人に愛されそうなモノを選ぶのが良いのか?
それが、お客さんのためか。
それでは私の心が満たされない。
「自分の好みではないけれど、これにはこういう魅力があります」と、客観的にお勧めできるほどのプロ店主でもない。
やっぱり、個人的に偏愛要素が見出せなくては、胸張っておすすめできないのだ。
うーん、悩ましい。

まあ、自分自身を商品として見立ててみれば、愛されない廃番品間近の隅っこ商品そのものだ。
たまに「へえ、こんなのあったんだ。ちょっと面白いかも」と、手に取る人が年に数人いる程度。
だから友人も少ないし、愛されキャラでもない。
しかし、愛されないキャラの私のことはさておき、うちの店に並ぶあれこれは、ちょっと見ただけでは分かりずらいけれど、作り手の創意工夫やポリシーが詰まっていて、「へえ!」と思える魅力がある(と思っている)。
ということは、それをきちんと伝えられたら、好きになってくれる人はいるはず。
でもあまりしつこくお客さんに語りたくないので、商品コメントを私的かつちょっとポジティブに書き換えることにした。
そうしたら、昔ながらの地味な入浴剤が人気者になった。
モノの価値は、見ているだけでは分からないことも多い。
分かって欲しけりゃ、分かってもらえるように伝えることも時には必要。
でもそれって、なかなか難しいんだよね。
あ、だからか。
「分かり合う」とかって、私は(かなり)苦手だわ…。

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或る日のギャラリーでの展示、くせ者くせ物展。
ショップオーナーやデザイナーなど、ひとくせある人たちが偏愛する、くせある物を持ち寄り、オークション形式で販売。持ち主にとって価値あるものが、さて、他者にはどれほどの価値を持つのか? を問う意味もあり、価格という価値を購入希望者に決めてもらうことにした。結果は様々。想像以上の高値がついたり、つかなかったり。人の価値のモノサシって、やっぱり千差万別だなあと実感した企画だった。でも、面白いので定期開催しようと思う。

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白月より出品した棕櫚箒。
箒で掃除することは少なくなったが、縁側の掃除に今も使用しているし、小箒は掃除機と併用している。掃いた時のフワッと跳ねるような感覚が快感。良い箒は、力を入れなくてもゴミがしっかりとかき集めるから、掃除効率も良い。「ダイソンの時代に、箒なんて誰も欲しがらないかな」と思いつつ、出して見たら意外なほど入札があり、無事に旅立っていった。


著者プロフィール
月刊連載『或る日。』毎月20日公開
prof_shirotsuki内藤 恭子
ライター・編集などの仕事をしながら、不定期にオープンする<好事家 白月>を主宰。
https://www.instagram.com/shirotsuki_kyoto/