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My life is like a café?

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『Hanako WEST Café』2000年
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『Hanako WEST Café2』2001年
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『ARIgATT』2001年4月号「カフェの可能性」
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『MUTTS』2001年10月号「カフェ自慢大会」

 前回はずいぶん寄り道しましたが、再び本筋に戻ります。
 2000年に入って、雑誌におけるカフェの情報発信を牽引したのが、『Hanako WEST』別冊として刊行された、『Hanako WEST Café』(東京でも出てたんでしょうか?)。好評を受けてか、05年まで毎年発行という勢いで、少なくとも関西では、まだ曖昧だった「カフェ」のイメージを集約、定着させた印象があります。
 創刊号のトビラページからは、ブーム全盛を迎えるまでの移り変わりがうかがえます。
 「この前まではオープンテラスのパリ的カフェが人気だったのに、いつの間にか時代はアジアン・カフェが気分になっています。でも、今、本当に行きたいカフェは?と尋ねられたらあなたは、アジアン・カフェと答えますか?それとも…今回、関西の人気カフェ136軒を取材してみると新しいキーワードが浮かんできました。それは「お家」。インテリアも、雑貨も、ドリンクも、和める気分がいい感じ」。
 大見出しにも謳われた「今、本当に行きたいカフェ」を体現するのは、パリ、アジアときて、“なごみ”と“お家”。ここにきて、カフェを語るうえで欠かせない2大キーワードが登場します。巻頭の展開も、まず「リビングのくつろぎ」を体現する空間、「ずっと愛せる」家具・「使い込むほど味わいが」出る食器、さらには「こんな店に住んでみたい」と思わせる外観ときて、「親しみ深いママの味を」感じるフード、ドリンク。その後に、家具や雑貨のカタログが続き、トイレを紹介するページまでも。同時期にカフェの店舗デザインで人気を博した「Café.co」や「graf」も大きく紹介。個人的には、関西を代表するグループとなった「ハットトリック」(シュビドゥビカフェ)と「バルニバービ」(カフェガーブ)の対決(?)も懐かしい。今でもお馴染みの店が出揃い、カフェが1ジャンルとして広く浸透した感があります。
 今見れば、インテリア雑誌もかくやという誌面は、いってみれば“カフェのライフスタイル化”を見事に可視化していました。続く01年の第2号でも、「ザッカフェスタイル」と銘打って、「こんな店に住みたい」から「カフェな雑貨でお家カフェ化計画」へとシフト。インテリアを前面に出し、お家で使えるアイテム紹介から始まり、レシピ付きのカフェメニュー紹介などを経て、お店紹介はようやく90Pから、という構成に。通販会社がセレクトしたカフェグッズを定期購入できる企画まであり、もはやショップのカタログに近いものがあります。
 加えて、『Hanako WEST Café』創刊と共に始まったのが、Webサイト、ハナコウエスト・ドット・コム。「ハナコウエストカフェ委員会」が本誌と同時発信し、読者からの情報も記事に反映。中には、カフェのHPベスト10なんてコーナーも。誌面にはiモードやezウェブの広告も頻繁に出ているのを見るにつけ、情報発信の形も含めて『Hanako WEST Café』シリーズは、“カフェなライフスタイル”を大きく広げた画期的な雑誌でした。
 ちなみに01年には、人・街・食のスタイルマガジン『ARIgATT』が、「カフェの可能性」を特集。巻頭には、「カフェブームの最盛期をむかえた今、これからカフェはどこへ向かうのだろうか?今回の特集では、和み空間からコンセプト空間へと変化しつつある、カフェの可能性を探っていこう」と、早くも“次”の動きを匂わせています。よりコンセプトを明確にした、大人の空間を取り上げた誌面は、『Hanako WEST Café』の男子版ともいうべき内容。とはいえ、いずれもライフスタイルをカフェに投影する傾向は共通しています。
 ことほどさように、カフェが生活の中に入ってきた中で、お家のカフェ化をさらに進めて行きつく究極が、自らカフェをオープンすること。実際、カフェの浸透ともに開業希望者も急増。バブル後の不況のせい云々が言われましたが、かつて脱サラの“でも・しか”開業者が相次いだ時代と違うのは、“自分流の表現”ありきなところ。『Hanako WEST Café』でも、巻末に近いページに「カフェを作ろう!」と題して、新規開業のケースを紹介。中には、Webで集めた企画や意見を取り入れた、『Hanako WEST』プロデュース店まであります。
 店を訪れるだけでなく、自ら開くものになり、全国にあまねく広まるカフェ。同じ01年に出た『MUTTS』「カフェ自慢大会」特集では、「カフェは『気持ちイイ』を表現できる自由なキャンパス。あなたはカフェに、どんなイメージを描きますか?」と、首都圏から京阪神、名古屋、仙台、沖縄まで全国のカフェを網羅。雑誌自体は短命に終わりましたが、その分?情報量の密度は圧巻。およそ400軒超(当社調べ)の店が隙間なく詰まった誌面は、奇しくも99年に『Meets Regional』が表現した、「ワガママの数だけカフェがある」「カフェは何でも叶えてくれる」という、期待と願望が濃縮されているかのようです。
 そのギュウギュウの記事の中に、ありました。「めざせ、憧れのカフェオープン!カフェが私の生きる道」なる開業密着レポートが。先輩カフェの店作りや、様々なプロからのアドバイスもあり、料理専門学校の講師や大学教授など経営の専門家による「カフェって儲からない業態なんです」、「カフェだってビジネス!お店屋さんごっこじゃマズイわけでして…」といった、経営に関するぶっちゃけ話も入っているのは、雑誌としては良心的? 空間はなごめるお家のようでも、実際に店を作るのは、また別の話。カフェを“ライフスタイル”から“ライフ”にするには、夢見る少女じゃいられない。21世紀に入り、そんなカフェの“リアル”も、徐々に垣間見えてきたのでした。


著者プロフィール
月刊連載『棚からプレイバック』毎月7日公開
icon_amaniga田中慶一(たなかけいいち)
珈琲と喫茶にまつわる小冊子『甘苦一滴』(@amaniga1)編集人。
1975年生まれ。関西で文筆・編集・校正業の傍ら、コーヒー好きが高じて、喫茶店の歴史から現在のカフェ事情まで独自に取材。訪れたお店は新旧合わせて900軒超。現在、全都道府県1000軒訪問を目標に活動中。2013年から「おとな旅・神戸」http://kobe-otona.jp/ で、コーヒーをテーマにした街巡りの案内人を務める。2017年に『神戸とコーヒー 港からはじまる物語』(神戸新聞総合出版センター)http://kobe-yomitai.jp/book/518/ 制作を全面担当。『甘苦一滴』のバックナンバーDL販売はこちらhttps://amaniga.base.ec/ 。