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音楽のキキカタ(その5)

私が演奏するアイルランドの打楽器「バウロン」。教室を始めて大分経つが、この3年ほどは代々木にあるアイリッシュパブ「An Solas」のサークル活動の一環として運営している。このバウロンサークルでは個々の技量に合わせ初級クラスと中級クラスに分け、中級クラスを私が担当し、初級クラスは北川有里さんに講師を担当してもらっている。北川さんは、東京の音楽大学で打楽器科を卒業後、在学中に出会ったアイルランド音楽やダンスを学ぶため、昨年3月より1年間アイルランドのワーキングホリデー制度を利用しアイルランド西部の町ゴールウェイに滞在していた。帰国後今年度の初めてのサークルでは、「一度楽器を置いて、じっくりとアイルランド音楽の演奏を聴いてみましょう」と言って、1枚の楽譜を参加者に配った。その楽譜はアイルランドの西部に住むコンサーティーナという楽器(アコーディオンの一種)の名手ノエルヒルのアルバム「Live in New York」の中から1曲を取り上げそれを採譜したものだった。そして、その曲のCDを流し始めるといくつかのポイントで楽譜にチェックを入れるように参加者に説明した。まずは長音、和音になっている部分にチェックをつけ、次に繰り返し演奏される曲の中で、繰り返しごとに異なって演奏されている部分にチェックを入れていった。そして、各チェックが入れ終わると、「アイルランド音楽は基本的には単音の旋律で構成されており、長音や和音で演奏されている部分については、演奏者が特別に気持ちを込めて表現している」と説明を加えた。そして続けて「多くの場合、1曲がAメロ8小節Bメロ8小節から構成されておりAABBのように繰り返され、1曲を3回程度繰り返し演奏し次の曲へとつなげ、2―3曲を組み合わせを一つのセットとして演奏するのだが、優れた演奏家は同じ曲を3回とも全く同じには演奏せず、それぞれにバリエーションを加えて演奏しているところが非常に興味深いのです」と説明すると「それを感じながら伴奏をつけてみましょう」と教室を進めて行った。

楽器の教室という特性上、演奏者目線という前提ではあるのだが、音楽をより深く理解するポイントをすこし教えてもらうだけでも、今まで聴いていた音をより楽しく聴くことができるようになる、そんなことを伝えられる非常に有意義な講座であった。

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※写真は楽譜とCDジャケット。(20年ほど前、日本では入手困難だったアイルランド音楽のCDも、今ではインターネットからのダウンロード購入が可能である。)

 


著者プロフィール
月刊連載『パイント・オブ・ギネス プリーズ!』毎月8日公開
icon_naga長濱武明(音響空間デザイナー・アイルランド音楽演奏家)

1992年に初めて訪れたアイルランドでアイルランド音楽と特有の打楽器であるバウロンに魅了され、以来十数回の渡愛の中で伝統音楽を学び、建築設計の実務も経験する。現在は音響空間デザイナーとしての業務をこなしながら、国内におけるバウロンプレーヤーの第一人者として国内外で演奏活動をする他、プロデューサーとしてコンサートやワークショップを主催している。
バウロン情報サイト バウロニズム https://www.facebook.com/Bodhranizm