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音楽とラジオ。

今の10代はすでにCDを聴くための手段を持っていない子も多いのだという。CDプレーヤーやCDラジカセだけではないCDドライブを搭載したパソコンも無いとのこと。音楽はLINEミュージックやiTunesなどの定額サービスか、もしくはYoutubeなどを試聴することが多いのだそう。なるほどCDが売れないわけだし、CDレンタルショップなんて需要がまるでないはずだ。アナログレコードやカセットテープにはダウンロードコードが付き、ネット上からデータを取得しスマホなどでも試聴できるのが標準だけれども、CDにもダウンロードコードが付くそんな時代が近い将来来るのかも知れない。

僕自身の話で言うと、ここ何年かはテレビ放送をほとんど見なくなった。何故かというと理由はハッキリしていて、時間通りにテレビの前に鎮座していないと見れないから。テレビは一応持っているが録画機材を持っていないのだ。知り合いがSNSで良いと言っていたので見てみようと思っても見る術が無い。そうなるとTVerや各テレビ局のオンデマンドサイトは便利なので、必然的に見逃し配信をしている番組ばかり見ている事になる。現在のテレビ番組が面白くないとは思わないけれど、リアルタイム試聴(あるいは事前予約録画)しかできないというのはあまりに時代遅れな感じもする。

その点ラジオはいいなぁと思う。1週間の期限はあるがタイムフリーでいつでも聴きのがした番組を聴ける。エリアフリーで全国のラジオ局の放送を聴くことができる。地方のラジオは予算が少ないことも多いから、その分マニアックな放送が聴けたりする。限られたエリアではなく全国を相手にすることで、よりコアな放送内容を勇気を持って挑める。そんなこともあるのかもしれない。

僕の住んでいる静岡でも「ようこそ夢街名曲堂」や「昭和音楽堂」、「ロック向上委員会」なんてマニアックな番組がある。「夢街名曲堂」はシュガーベイブのマネージャーだったり伝説的レコードショップ・パイドパイパーハウスの店主としても知られる長門芳郎さんの番組。ソフトロックや往年の名曲をかけるポップス好きにはたまらない放送だ。山下達郎さんの「サンデーソングブック」的な趣きだけども、はっぴいえんど~シティポップフォロワーの若いミュージシャンを積極的に番組にゲストとして呼び、世代の橋渡し的な役割もしている点が大きく違う。「昭和音楽堂」は70年代から80年代日本ポップスの黄金期を築いた作・編曲家の林哲司さんと俳優の半田健人さんによる昭和歌謡番組。アレンジャーやスタジオミュージシャンなどマニアックな切り口から毎週歌謡曲を分析するかなり攻めた番組になっている。「ロック向上委員会」にいたっては英米の古典ロックとインドネシアの(今注目されているインドネシアポップとはまるで違う)ディープなハードロックを毎週流すという地方ラジオでないと許されない偏向ぶりだ。

他のエリアに目を向けても面白い番組が多い。エフエム長崎で元ピチカートファイブの高浪慶太郎さんがDJを務める「Playtime rock ナガサキ音遊び」などはA&Mサウンドが好きな人にはたまらない渋谷系版サンデーソングブック。福岡LOVE FMで放送している「Teenage Peeps」はティーン向けのユースカルチャー番組だけれども恐らく全国でも屈指のエッジの効いた選曲で、国内外の若い世代の新しい音楽、カルチャーをいち早く捉えている。同LOVE FMでは「常盤響のニューレコード」、「LABELS FUKUOKA」「FUKUOKA CALLING」なんて番組も愛聴している。TBSラジオでも野球のナイター放送の時間を潰して始めた「アフター6ジャンクション」では、インディーからメジャーまで注目のミュージシャンをスタジオライブさせるコーナーがあり耳の早いリスナーに注目を集めている。

実際にラジオのSNSとの親和性の高さや瞬発力などが評価され、若いリスナーを獲得しているように思う。ではサブスクリプション(定額視聴)サービス時代にラジオの価値は何だろう。僕はパーソナリティの専門性が大事になっていく気がする。ミュージシャン側面から演奏技術や曲の構成上の優れた点を解説してもらうのも楽しいし、楽曲の背景になっているカルチャーやルーツ、そんな話を聞くのも楽しい。入り口のわかりにくい未知の音楽を面白く聴くための提案してもらうのも楽しい。音楽のコンシェルジュ的なパーソナリティが、これからラジオにどんどん増えていく。そんな気がしている。

今月の1枚:c_siphon31-2
Mega Shinnosuke「MOMO」(自主制作/2018)
福岡在住の現役高校生Mega Shinnosukeによるソロユニット。福岡のラジオ「Teenage Peeps」でいち早くオンエアされ、全国でもすでに注目を集める注目株。シティポップ~アーバンポップの最先端を走るクオリティの高いサウンドは、次世代を代表する存在になるだろう。
https://open.spotify.com/album/6qxAt69lfb0OmYUQgvYn10

 


毎月22日公開 月刊『片隅の音楽』
icon_siphon宮下 ヨシヲ
グラフィックデザイナー
Siphon Graphica(http://siphon-graphica.net/)主宰

1976年、愛知県豊橋市生まれ。グラフィックデザイナー、ブックデザイナー。高校生の頃より英米インディー音楽に傾倒し、大学在学中にZINE制作を始め音楽誌に音楽ライターとしてキャリアをスタート。自ら雑誌制作の全ての行程に関わりたいとデザインを学び出版社、広告デザイン会社を経て、2008年サイフォン グラフィカ設立。2013年浜松に事務所を移設。現在はブックデザインを主なフィールドとしながら、ショップなどのトータルデザイン、パッケージなども手がける。

イラストレーション:akira muracco(http://akiramuracco.me/top