bn_shirotsuki

受け止めてくれる服。

或る日、愛用していたシャツが似合わなくなった。

ええ? どういうこっちゃと、まじまじと鏡を見て愕然とする。
かつての「こんな感じの私」が、そこにはおらず、「見覚えのないシルエットの自分」がいた。
誰やねんって、紛れもなく自分なんだけれど、あれこれが経年劣化を起こしていて、自分の脳みそが現実を受け入れ拒否する。
シャツに罪はない。
私が、変わったのだ。
体型も、雰囲気も、何もかも。

そんなことだから、服ジプシーになった。
何を着たらいいのか、分からなくない。
どれもしっくりこないと途方に暮れても、裸族でいられるわけはなく、取りあえず入る服を着る。

確かに、気づけば大幅に体重はオーバー。
スーパーで10kgの米袋を眺めながら「これ以上にウエイトオーバーしてるんだよなあ」と、あんぐり。
そりゃ、体型は恐ろしいほど崩れるにきまっている。
苦しくなくて、見苦しくなくて、動ける服を探す。
ウエストはゆったり、もちろんゴム万歳!
ヒップはすっぽり包んでくれるチュニック丈が安心安定。
しかし、そうなると、もはやバーバファミリー(古いキャラクターで申し訳ない。ご存知だろうか)
おばちゃんがムームーと呼ばれるワンピースを着ている理由が、ついによーく分かる年齢に私も突入したのだと実感する。

でも、しかし。
ラクチンだけを優先すると、テンションがいまいち上がらない。
心にスイッチが入らないというか、アクセル踏んでもスピードでない感じっていうか。
だからって、ダイエット宣言できるほどストイックさがない。
スイーツだって我慢したらストレスでハゲそうだし、糖質制限なら年齢制限に引っかかるほうがましだ。

インスタ映えはどうでもいいけれど、ちょっと代わり映えする服を求めてさまよい続けた結果、いくつかお気に入りのブランドをようやく見つけた。
その一つが、NEW WAY,NEW LIFE。
何だかブランド名からして、ちょっと新たな自分になれそうな気配を漂わしている。
ひと目惚れだったワンピースは、昔のナースガウンをモチーフにしたものだった。
背中が開いているから、少々おデブが加速しようが問題なし。
しかも、前後を逆にするとコート風に着ることもできる2WAY。
一枚で二度美味しい、関西人好みのデザイン。

これを自分の店でも取り扱いたいと、東京のアトリエを訪ねた。
彼らはたった二人でデザインから縫製まで、すべてをこなしている。
だから大量生産はできないし、どれも1サイズで展開している。
でも不思議と細身の人にも、私のようなオーバーサイズなタイプにも、それなりに体に沿って違和感なく馴染む。
何度も調整を重ねてパターンを調整した結果だ。
だからトレンドに左右されず、定番の型を大切にしている。
廃番の恐怖に怯える必要もない(そんな人私だけか)

服やブランドに体を合わせるのは、私には無理だ。
「まあ、そのままでも何とかしてあげるよ」と、受け止めてくれる懐の深い服を見つけるのが、私の服選びの基準。
その代りと言ってはなんだが、NEW WAY,NEW LIFEの服は受注生産だから、少し待たねばならない。
いわば「お互いさま」を受け止めあって成立している関係性。
でもそれって、服に限ったことじゃない。
人間関係もそうだと、しみじみ思う。
こんな私でも、「まあ、仕方ない」と受け入れてくれる人としか、長くは続かないから。
NEW WAY,NEW LIFEのシャツに袖を通しながら、「私ももうちょっと寛容な人になろう」と思う。

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「前回売り切れたあのシャツが欲しい」と泣きついて、11月23日より、主宰する好事家 白月で2回目のNEW WAY,NEW LIFEの展示会を開催。もはや裏テーマは「私の欲望を満たす会」ですが、れっきとした2019春夏コレクションのオーダー会で、定番シャツから新作のコートも展示予定。詳細はInstagramでご覧ください。


著者プロフィール
月刊連載『或る日。』毎月20日公開
prof_shirotsuki内藤 恭子
ライター・編集などの仕事をしながら、不定期にオープンする<好事家 白月>を主宰。
https://www.instagram.com/shirotsuki_kyoto/