bn_shirotsuki

美しい無駄。

或る日、リングをなくした。

いや、しょっちゅう見失っているんだけれども。
「あああ、今日はあれを着けたかったのに」とボヤきつつ、違うリングをはめる。
翌日、ケースを見ると、あるじゃないか。あのリングが。
見えてないのか、私。
注意力も散漫だし、そもそも目も悪い。
出番が多い常連リングは、目の届く所に置いておきたい。でも出しっぱなしは家人に注意される。
だったら、出しっぱなし感のないものに置けばいいんだよね?
それって、リングスタンドってやつか。

ちょうど、自分のショップのリングスタンドが欲しいと思っていたところだったので、探してみたけれどなかなかこれというものに出くわさない。
スタンドを見つけるのが先か、リングを紛失するのが先か!とソワソワしながら捜索するけれど、ついに嫌になって「だったら、作ってもらえばいいんじゃないか」と、どんな物が欲しいか考えてみた。

まずは「え? 出しっぱなしですけど何か? 私はオブジェです。ここに並んでいて当然でございます」てな顔したルックスは譲れない。
やはり見て楽しめる可愛さか、美しさを持ち合わせて欲しい。

しかし、ふと考えてみると、それって自分の怠惰をごまかす言い訳的作品ともいえるかも。
そんなもの作家に頼んでいいのだろうか。
しかも、それに労力と材料を消費していいのか? 無駄じゃないか。
いや、無駄じゃないようにすればいいんだ。

…そんな私の脳内でもでもだって問題を解決すべく、選んだのが木製のリングスタンド。
うちで取り扱っている木工作家・前田さんのアトリエを訪ねたとき見かけた、廃材になりそうな木端で作ってもらえないかしら。
前田さんは台風21号で倒木した木々を引き取り、作品を作ったりもしていて、人にも優しいが木にも優しい。
相談してみると、快諾してくれた。やっぱりいい人だ。

条件は以下。
廃材的木端を使用し、リングスタンドのために木を刻まない。あるサイズの木端で制作する。
完成サイズはバラバラでOK。材料を無駄にせず最大限生かして欲しい。
木の種類も統一しなくてOK。
デザインもサイズによって違いが出るだろうから、1点ものとしてバラバラでOK。

チェスのコマのようなイメージで、ヴィンテージの家具の脚やキャンドルスタンドのデザインをモチーフにしてもらい、一つずつ削り出してもらった。
ある意味、無駄なアイテムかも知れないが、命あった木を最後まで使い切ることができるのだから、プラマイゼロ。
いや、プラスかも! と自画自賛。
しかしその分、作り手は作業が細かく面倒になるわけですが(すみません)

何度かやり取りをして、数カ月後。
「できたよ!」と届いたものを並べてみると、keiokairaiのメンバーが「tomteみたいね」とひと言。
北欧の小人らしい。
幸福をもたらすという小人たちが8人やってきて、ショップのテーブルは何だか賑やかになった。
飾りつつ販売しているため先日、「リングを飾ったら、まるで王様みたいね」と、気に入ってくださったお客様に迎えられて、一人旅立って行った。

必需品だけでの生活は、それはそれで潔く美しいのだろう。
でも私には、意味ある無駄がやっぱり必要だ。

c_aruhi7
tomteと名付けたオリジナルのリングスタンド。脚の台座の形も、デザインもバラバラで一点物で、ナラやサクラなど、木の種類によって色や木目が違っていてそれぞれに美しい。


著者プロフィール
月刊連載『或る日。』毎月20日公開
prof_shirotsuki内藤 恭子
ライター・編集などの仕事をしながら、不定期にオープンする<好事家 白月>を主宰。
https://www.instagram.com/shirotsuki_kyoto/