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アップデートする大御所たち。

山下達郎さんのクリスマスイブがオリコン週間シングルランキングで33年連続でランクインという快挙を遂げたそうだ。1983年に発表されたこの曲は1987年のJR東海のCMソングとして使われ再び脚光を浴びた。以来クリスマスの定番ソングとしてスタンダードなものになっているのはお馴染みのことですよね。33年もランクインし続けるクリスマスイブのスタンダードソング化とは別に、今や20代の若手ミュージシャンたちの間で山下達郎の評価というの高まる一方だ。FOR YOUやSPACYといったアルバムは海外のフューチャーファンクの定番サンプリング元になってしまったし、ここ数年の日本でのシティポップリバイバルでも結局は達郎サウンドをどう自分たちの音にするかが中心だった気がする。

時代に合わせて音楽性を変えるのではなく、一貫した達郎サウンドを奏でて続けているのも面白い。いつの間にか時代が一周してまたユースカルチャーのど真ん中に来てしまったという感じだろうか。これだけ長期に渡って第一線でリリースを続け、あるいは評価されている人にも関わらず、そういう存在になった人というのはそんなにはいないだろう。

そういえば音だけでなく、鈴木英人さんや永井博さんに代表される80年代の日本を彩ったイラストレーターも注目されたのがシティポップリバイバルの面白い点でもあった。イラストレーター、漫画家、映像作家として活躍するサヌキナオヤさんみたいな30代に影響を受け継ぐ存在が出てきているのも頼もしい。もちろんサヌキさんにおいてはエイドリアン・トミネなど海外からの影響もあるのだろうけれど。それはそうとしてイラストにおいて40年以上売れ続けているにも関わらず、今もユースカルチャーの中にある、イラストレーター界のヤマタツと言えば江口寿史さんではなかろうか。

江口さんといえば最近新潟のバンドSO NICEとアイドルRYUTistのカップリング7インチシングル「日曜日のサマートレイン」のジャケットを手がけられていた。これがまたお見事であった。特に背景における線において自身の80年代のイラスト手法を取り入れ、着彩においては2018年の80年代風イラストマナーをさりげなく踏襲している。基本的な作風は一貫しているのに、時代の空気感を取り入れ細やかなチューニングを施しているのだ。一線で仕事をしている強さはそういう所なのだなと思う。

SO NICEといえば山下達郎が在籍したシュガーベイブのライブを当時生で見て、感激しバンドを組んだという現在は新潟在住の鎌倉克行さん率いるバンド。1979年に自主制作で作られたLPは2007年に発掘されシュガーベイブマニアの絶賛され2011年にCDで再発されている。今やシュガーベイブのオリジナルメンバーでギタリストの松村邦夫さんと何度も共演したりもされているので運命というのは面白いものですね。

シュガーベイブといえば今年惜しくも亡くなられた元メンバーで翻訳家の寺尾次郎さんの娘さんであるミュージシャン寺尾紗穂さんが、あだち麗三郎さん伊賀航さんと新たに始めたバンド冬にわかれてもなかなか面白い。ミュージックビデオとして公開されている「君の街」は、まさにシュガーベイブ的を彷彿させる。大貫妙子さんのような寺尾さんの浮遊感のある歌声が、細野晴臣さん的とも言える重く柔らかいグルーヴに乗る。しかし懐古主義ではなく2018年の音像に仕立てられているのが気持ちよい。個人的にはこれがシティポップリバイバルの最終到達点のように感じている。

今月の1枚:c_siphon31-2
冬にわかれて「なんにもいらない」(P-VINE RECORDS/2018)
https://www.youtube.com/watch?v=d4p5gLhSzHI



毎月22日公開 月刊『片隅の音楽』
icon_siphon宮下 ヨシヲ
グラフィックデザイナー
Siphon Graphica(http://siphon-graphica.net/)主宰

1976年、愛知県豊橋市生まれ。グラフィックデザイナー、ブックデザイナー。高校生の頃より英米インディー音楽に傾倒し、大学在学中にZINE制作を始め音楽誌に音楽ライターとしてキャリアをスタート。自ら雑誌制作の全ての行程に関わりたいとデザインを学び出版社、広告デザイン会社を経て、2008年サイフォン グラフィカ設立。2013年浜松に事務所を移設。現在はブックデザインを主なフィールドとしながら、ショップなどのトータルデザイン、パッケージなども手がける。

イラストレーション:akira muracco(http://akiramuracco.me/top