bn_okamoto14

1月 インスタントラーメン

 正月三が日はさすがに家で過ごす時間が長く、食事はお節や雑煮になる。いつも年末ギリギリまで大掃除をやっていて、しかもたいがいは終わらないままに新年を迎える。正月の買い出しも大晦日ギリギリになってしまうのだが、その際に絶対にリストに加えるのはインスタントラーメンだ。以前にも書いたが、お節はすぐに飽きてしまうし、好きなものだから珍しく自分でつくる雑煮さえも、三が日を過ぎると台所に立つこと自体が面倒になってくる。そういう時に役に立つのはインスタントラーメンだ。リストにチャーシューとメンマと書き込むことも忘れない。
 どこでも売っているものだったら、いつも「サッポロ一番 塩らーめん」を選ぶ。味噌も捨てがたいけれど、やっぱり塩。醤油という選択肢は、ぼくにはない。おそらく子供の頃から近所のラーメン屋で食べつけていたのが塩味だからだろう。北海道出身だと言うと、たいがいの人は「やっぱり味噌がいちばんですか?」と尋ねるのだが、味噌ラーメンがぼくの生まれ故郷の田舎町に「札幌で流行っている」という触れ込みで登場したのは、小学校高学年の頃だった。つまりは味噌はニュースクールなのである。オールドスクールなぼくは、ブームに流されたこともあったけれど、結局は自分のクラシックである塩に戻るのだ。
 暮れも押し詰まったある日、デパートの地下食品売り場で「ご当地インスタントラーメン・フェア」なるものが開催されていた。もしかしたらぼくの好きな北海道旭川の「熊出没注意ラーメン」があるかもしれないと思った。何度か食べたことがあって、それ以来、旭川に行くたびに探すのだが、どういうわけか塩味だけ売り切れていることが続いた。道産子はやっぱり塩なんだよねと、自説の正しさが証明されたような気分にはなるものの、もう何年も食べていない。あれがあったら最高だ
 最初にパッと目に入ったのは、愛知県碧南市の「キリンラーメン」だった。知らぬ間にいろいろ種類が増えたようで、「カピバララーメン」というのもあった。カミさんがそれを買おうと言う。ぼくは首を縦に振らない。さらに棚を見ていくとすぐに「熊出没注意ラーメン」が見つかった。味噌・醤油・塩の三つの味がすべて揃っている。在庫すべて買い占めたいところだったが、ぼくと同じように塩味を求めるファンも多いかもしれないと思い、4袋だけにとどめた。なんだか徳を積んだような気持ちになる。きっと2019年も良い年になるに違いない。

c_oka36
 


著者プロフィール

月刊連載『好物歳時記』毎月2日公開
icon_okamoto岡本 仁(おかもと ひとし)

ランドスケーププロダクツ
北海道生まれ。いろんな町をブラブラして、いつも何か食べてる人
と思われていますが、いちおう編集者です。
著者は『ぼくの鹿児島案内』『ぼくの香川案内』『果てしのない本の話』など。
雑誌『暮しの手帖』で「今日の買い物」という旅エッセイを連載中。