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エアリバデルチ今昔物語

今は昔。
ナイキにエアリバデルチなるカルトスニーカーがあったげな。

1992年にナイキのAll Conditions Gear、略して「ACG」っちゅう注射みたいな名前のカテゴリーからリリースされてのう、当時20代前半のワシはキュンキュン(死語)しちゃったもんです。

と言うことで、それまでにないスニーカーを生み出すパワーみたいのが目覚しかったころのナイキの一足AIR REVADERCHI。(←この造語はいつも綴りが合ってるか不安になります)
いつものように家の納戸を発掘すると、はい出てきました。

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1992年のオリジナルです。友人のやっさんに誕生日プレゼントでもらいました。
嬉しすぎてたくさん履いたのですごく汚れています。
汚れてますが、色づかいなんかは当時の雰囲気が伝わりますね。このACGカテゴリーのカラーリングと言うのはこの時代にあってすごく独特な印象で『初めて見た!』と言う感想を抱くことが多くあったのを思い出します。ピンクやパープルが多用され始めたのもこの頃だったかも知れない。
エアジョーダンの人気もどんどん上がって行くときで、日本のスニーカーカルチャーがあからさまに大きなムーブメントになっていました。

とは言え、そんな92年のオリジナルも長年の劣化には耐え切れなくなる日が来るのです。ある日食事を終えてお店から出ようとした時に、足元で『バン!』と言う轟音が響いて、驚いて目をやると、ソールがキレイに丸ごと剥がれていました。

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この場合は接着剤の劣化が先に来たと言うことで、感心するくらいキレイにミッドソールから下が剥がれ落ちたのですが、落胆するよりも構造が見えたことに胸が高鳴った自分に変質者の要素を垣間見ました。

スニーカーは革靴の製法と違って、アッパーとミッドソールを繋ぐのは主に接着剤です。ミッドソール自体は使用下における様々な影響からの劣化は避けられないものなので、スニーカーファンは日々朽ちて行く自分の宝物に涙するとかしないとか。
しかしここまでキレイに剥がれ落ちると、まあ興奮します。
と言うことで見ていきましょう。

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アッパーの底。インソールの裏側にあたります。足型を示すであろう破線や実線とともに、AIR REVADERCHIとシューズの名称が書いてあります。さっきの綴りが合っていて良かった。
アルファベットと数字は「M10」とあります。なんでしょう?マッハ10でしょうか?ロシアの新型ミサイルの速度がマッハ10だって言うんですが、まさかこれは・・・?と言うことで当然ですがメンズの10インチ28cmです。

そして剥がれ落ちたソール側には黄色く劣化した接着剤とともにオーバル型の白いパーツが。

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日付が1992.10.5とあります。
僕が22才になった一週間後にこの靴は生まれたんですね。
むう、ただならぬ縁を感じる・・・・ことはありません。
ナイキのスニーカーの製造月と出荷月は製品のタグでわかります。が、細かい日付はわかりません。そこにあってこのパーツには製造日がはっきりと明記されている。
普段目にしない秘密が明らかになって興奮します。

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さてこの日付の下にはなにがあるか?
もちろんナイキの代名詞たる画期的なクッショニングシステム「AIR」が収まっています。こうなったら開封してAIRを取り出そうかな!?とも思ったんですが、ソール自体の状態は良好で、硬化などが見られなかったので、良い接着剤が見つかったら再生プロジェクトを実行するために現状維持となりました。

そんなカルトスニーカー、エアリバデルチ。
実はここ数年の間に散発的な復刻がなされて、すっかりカルトではなくなってメジャーな存在になりました。
と言うことでここからはオリジナルと復刻版の比較。

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意外や土踏まずのモデル名のプレートのカラーが意外と違いますね。
オリジナルはボルドーで、復刻はパープル。これは意図的な変更でしょう。
あとその直上の縫い込みも少し異なりますね。
黒いアウトソールの上でステッチが終わっているのがオリジナルで、グレーのミッドソール側まで伸びているのが復刻版。ここは大きな違いがありました。
性能に影響するのか、生産過程の都合によるものか?実に興味深い。

では次にミッドソールの装飾、スペックルを見ていきましょう。

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オリジナルの方がランダム感のあるペイント。色も軽いですね。
復刻はキレイに散らしてますね。なんだか法則性があるような。色は重め。

シュータンも比較。

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「ハラチシステム」と呼ばれるソックライナー構造を採用しているので、エアハラチのロゴがシュータンに付いています。わかりづらいですが、ちょっと違うのがTMマークのあるなしが違います。92年当時は登録してなかったのかな?はい、そんなわけないですね。

最後はヒールのNIKEロゴ。

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オリジナルの手書きのような丸っこい感じが愛らしい。
復刻は直線的で機械的。クオリティの安定を感じます。

などととりとめのない検証をした結果、なにか得したことがあるのかと言うと特になにもないですね。
でも検索とかしないで自分でこんなことを調べている時間が、いまやとても貴重な時代かも知れません。満足しました。

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著者プロフィール

月刊連載『GARAKUTA HAVEN』毎月28日公開
なかがみやすお

1970年生まれ。戌年。
アパレルの販売を生業としています。
若い時は某アーティストのマネージャーやスタイリストとして動き回っていた時代もありましたが、
30代以降はアパレルに腰を据えて『ゲストサービスの正体を見極める』を胸に秘めて仕事をしています。
この5年半は明治通りのショップで統括店長兼バイヤーとして、多忙に翻弄される日々ですけれども、正直毎日とても楽しいです。
洋服が好き。グラフィックデザインが好き。カスタムすることと工夫することが大好きです。人生は工夫だと思っています。
ここでは僕が心の拠り所(HAVEN)とする、 ガラクタっぽいけど良デザインなモノをご紹介していきます。