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三十六杯目 僕のけだるいお正月

新しい年を迎えると、日常を少しリセット出来る気がする。ほんとは何にも変わってないけど、ちょっと踏み出してみるにはいい機会。

踏み出すなら最初が肝心。一気に変わろうったってどうせ続かないし、はりきりすぎても周りが迷惑。1つだけ変わるぞと決めて、静かに行動に移すのがコツ。

築地、餅つき、新年会。初詣、初夢、初笑い。初日の出は二日酔いで拝めなかったけど、正月らしい休暇を過ごすことができた。

昔は、正月があまり好きじゃなかった。まず第一に、餅が苦手なのだ。人が食べてるのを見るだけで、喉が詰って息苦しくなる。

そして、おばあちゃん家。どうして老人の家というのは時間が経つのが遅いんだろう。お年玉は嬉しいけど、もらったらもう暇になる。めったに顔を合わさない親戚との会話も続かない。 

同い年の従弟たちは皆成績が良かったので、集まるといつも比べられた。絶望的に暇なので、親戚のおじさんが、歴史や漢字のクイズを出題してくるのが本当に嫌だった。

カルタやトランプに熱中しているふりをしながら、お前らの姉ちゃんよりも、うちの姉ちゃんのほうが美人だもんね。と、心のなかで拗ねていた。

習字は嫌いじゃないけど、書き初めは煩わしかった。畳に這いつくばって文字を書く姿は滑稽だし、まあまあの字が書けても「◯年◯組 名前」が下手だとがっかりした。和紙を折らずに登校するのも一苦労だし、嬉々として部屋中に新聞紙を敷きつめていたのは書道を習ってた生徒だけだろう。

2019年の一文字を選ぶなら「変」。変えていくけど、なるべく変わらないようにしたい、の「変」。

「変」といえば、ここ数年ですっかり変わった体型は至急戻したい。成人式のときに買ったスーツは、もはや自分のものとは思えない。

今年は成人式で大雪が降らなくて本当に良かった。センター試験は毎年インフルエンザが流行ってる時期に行われるし、新しい元号(年号)を機に、時期を変えたらいいのにと思う行事は多い。

2020年の東京オリンピックの開会式は10月にすべきだと思っている。7月下旬の東京は暑すぎるし、8月9日に閉会式だと騒ぐのは賛成できない。

節分、お花見、月の満ち欠け……季節の移ろいと人の笑顔を大切にする年にしたいと思う。

気持ち良く晴れた小寒の午後。上野をうろうろ、根津をぞろぞろ。常連さんたちと食べた今年最初のハンバーグは、素朴で丁寧な味だった。


著者プロフィール

月刊連載『外苑前マスターのひとりごと。』毎月15日公開
icon_saeki佐伯 貴史(さえき たかふみ)

BARトースト』のマスター
コーヒー会社で営業を経験後、雑誌の編集に興味を持ち『R25』『ケトル』等の媒体に携わる。歌と本と旅と人が好き。餃子は酢とコショウで食べるのが好き。