bn_asai

蛸のサンダル 第33話 卵の色

ああ、びっくり。蛸のサンダル今回を書こうと、前回までのお話を読み返してみたら、22話の最後に「今日もコラムは終わっていくのでありました」とあるのに句点(。)を打っていませんでした。終わらないじゃん。

大変失礼しました。気を取り直して、今月のお話しをしましょうかね。

一ヶ月の間にまたもや、いろんなことが起こった。毎日が新しいことの連続だ。会社員だった時も新しいことはあったが、多少マンネリ感は否めない。いまは、不安と希望の波間で泳いでいるようなものだ。しかし、楽観的なのか、希望のほうが大きく渦巻いているので、恐ろしさはない。

c_asai33-1

ご縁あって、小学生の食育体験を手伝った。
(https://www.facebook.com/281822072522745/posts/309601266411492?sfns=mo)

あの“わたしの冷蔵庫”と読んでいる百貨店で、短時間だが食品売り場の売り子をしたのであります。地方から来た小学生たちが、大勢の父母の皆さんと先生方が見守るなかで、自分たちの地域の伝統野菜をPRした。わが子が働く姿を見たいのは全国共通なのか、わたしの母も甥とともに来店し笑いながら野菜を買って帰っていきました。

食育というと、これを食べさせたいとかこれを食べさせてはいけないとか、食べものの良し悪しを話すことが多いように感じるが、わたしが目指している食育はそういうことではない。

食の歴史
   それって何なのか。どんなストーリーがあるのか?

食の経済
   生産から流通から加工調理、食卓まで誰の手でどう届けられるのか?

食の技術
   どう加工・調理をしたらおいしいのか? おいしさとは何か?

というようなことを「知る力、考える力」を持たせることが食育だと考えている。もちろん知らなくても生きてはいけるのだが、食べものに興味を持ってもらうことで、将来食の仕事に就く人材も増えてくれるんじゃないかと期待しているのであります。

たとえば小学生なら給食の時間を30分延長して、そのぶん本日のメニューの食材がどこで取れ、誰がつくったのかの情報を知るだけでも、毎日充分な食育になると思うんですよ。そして、今回の百貨店でのイベントのように、ある時は実際に地方の野菜が東京で売られているのを見たり、逆に東京の小学生が地方の産地を見に行って、そこで交流が生まれたら素敵なことだなとも思う。別に野菜に限らず、水産物も加工品も、あらゆる食材に関してできる。中学生にだって高校生にだって、きっと良い教材になるはず。高校生レストランというのも、あるぐらいですからね。

c_asai33-2

先日は、とある有名パティシエさんと卵の話になった。
卵黄の色が黄色かったりオレンジ色だったりするのは、鶏に食べさせる飼料のなかの色素による。色素といっても元来含まれるカロチノイド色素(ニンジンの色などと同じ)の量が左右するのだが、卵メーカーは意図的に飼料の配合をもって、卵黄の色をコントロールしている。お米を食べさせて卵黄が白い卵もある。そのことを、彼は独立してオーナーシェフになるまで知らなかったという。

正直に言うと、こういう例は多い。料理人さんが著名になって始めて、調味料の製造工程を知る、だとか。技術の研鑽にすべて時間を費やして来られたのだと理解はしているのだが、わたしはずっと彼らを見てきて、もっと若い時に扱う食材のことを知りたかったんじゃないかと思ってしまう。わたしが食育という言葉にたどり着いた理由のひとつであります。

卵の色を食べたものが決めるように、人の未来も食べたものが決める。わたしは自由が好きだから、基本的に好きなものを好きなように食べればいいとは思うけれど、食べもののことをもっと知りたいと思う情熱は、伝えていきたいなと思っております。

今回は超まじめに書いてしまいました。蛸サンなのに。蛸サンなのにって、蛸サンはどんだけふざけているのか(いつも大まじめです)。
書いてもらったイラストはあるのですが、じらして次回。
そして次回はひとつ新しいプロジェクトを発表します。


著者プロフィール
月刊連載『蛸のサンダル』毎月6日公開
icon_asai浅井 裕子

株式会社anemosu代表取締役。東京・新宿生まれ。食の老舗出版社に編集者として25年5ヶ月勤務したのち、退職。2018年10月に独立起業。日本の「食」と「大人とこどもの食育」をもっと楽しく深く広めることをテーマに、出版、情報サービス、教育サービスなどを通じて多角的にプランニングしていく予定。趣味はベランダ園芸と料理。血液型はO型、天秤座。