男は桜木、僕は一人

春の海 ひねもす のたりのたりかな

与謝蕪村が詠んだ名句。
穏やかな波が一日中寄せては返している、あぁ春、すげぇ和むわ。という句です。
多分僕とかが詠んだら「働け」と一蹴される事でしょう。

こんにちは、日比谷店の田中です。

現実は時折の風も強く、寒さと暖かさを行ったり来たり。
田舎に住んでいるという事もあり、出勤時の朝は正直むちゃくちゃ寒いです。
それでも仕事終わりは先月と比較してかなり暖かく、春をぐわんぐわん感じる今日この頃。皆さま温度差で体調崩さぬようご自愛下さい。

さて先日、仕事終わりいつも通り帰路へ。
有楽町駅から山手線に揺られて上野駅まできたところ、乗り換える路線が止まっていました。
僕の使う電車ではよくある事なので、さほど驚きもしません。
ダイヤ復旧までの間、スマホで動画でも観ようかと思ったのですが、ふと降りてきました。

『夜桜を見ては如何か』

昼の桜は先輩と見たのですが、夜桜はまだ見ていません。
この名案が霞まぬうちに、ホームに背を向け早速歩き始めました。

上野駅中央改札は来た人向かう人、待ち合わせる人でごった返しています。
人混みをすり抜け、駅の外へ出て右折。
高架下をくぐって横断歩道を渡り、飲食店が詰め込まれたビルを右手に歩き、コンビニへ。
花見用に買い込みまくっている列に並んで金麦を一本購入。店員さんの「え、お前これだけ?」みたいな反応が少し傷付きました。

上野公園へと続くだらだらとした階段を、前の人のペースに合わせて上がり、呼吸を整え見ると。

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おぉ、夜桜。
昼間の薄ピンクとは違い、雪洞の赤に照らされてなんとエロティックな桃色ではないですか。
さっそく檀れい不在の金麦をプシュッと空けます。
階段の仕業で多めの泡が噴き出すも、これまた一興。
周囲の人がこちらをちらっと見た気もするけど、何、今宵は夜桜見物、さほど気になりません。

イアホンからシャッフルで流れているのはボズスキャッグスのHard Times。何という物悲しい選曲。
そういえば去年日比谷店がオープンして、仕事帰りに1人ちらっと見たなぁと思い出し。更には思い出さなくてもいいような事まで思い出し、思わず座り込むかと思いました。

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しかし月を見たり、花を見たり。
日本人の文化というのは良いものです。
遺伝子レベルで組み込まれていますよね。なんとなく、満月も桜も不意に見上げてしまう。

周囲の人達も楽しげに歩いています。
雪洞の赤と、警備員の持つ赤光る棒と、桜の花が女性の瞳と頬を照らし、あぁなんと美しい事。
その隣ではスマホをいじる男性。SNSに写真アップしてるのか?見ろ。桜と彼女を。横を見て、君の方が綺麗だよとか言ってろ!!くそー!!
いつのまにか空いた缶を捨てます。ゴミの管理大変だろうなぁ。

まだ暗くなって間もない時間だった事もあり、家族連れも沢山いました。
小さい子供がスマホを掲げ、桜の下に並んだ両親を撮っていました。幸せ家族。
お父さんが写真を確認し「おいおい、パパ写ってないじゃん!笑」て言ってるのを聞いて、なんだかクラクラしました。金麦が効いてきたのでしょうか。

桜の回廊も歩き終わり、先にはライトアップされた東京国立博物館が見えました。
折り返して同じ道を帰る事に。

そこでイアホンからエアロスミスが。
そう、あの名曲「I don’t want to miss a thing」
僕だけでしょうか、この曲を聴くと目の前の風景が全て「最終回感」のような「死ぬ前の走馬灯感」のような雰囲気になるのは。

彗星で爆弾のスイッチを押した瞬間、いつの日か見たあの夜桜を思い出し、思い出の中で永遠にも感じる時を歩く。
そんな設定で帰り道は楽しみました。

曲の後半、タイラーがむちゃくちゃ盛り上がってきた頃、おばちゃん集団に写真撮って欲しいと言われ、撮ったら御礼に常温のストロングゼロのロング缶を貰いました。
「あ、ありあっすぅ。」と、ありがとうの親戚みたいな返答をしてプルタブを空けると、おばちゃん達が急に一気コールをし出し。
そそのかされるままに一気して、まばらな拍手をいただいて別れました。何だったんだ。返してくれ、アルマゲドンの走馬灯を。

以上、東京ぶらり途中下車の旅でした。

尚、電車が止まった理由は地元近くの架線に凧が絡まったとの事。昭和か。

日比谷スタッフ 田中