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第一回 気付かれないから素敵

後輩のコピーライターK君と話をした。
子育てでなにかと大変なんだそうだ。
彼自身は頑張って子供と遊んでいるつもりなのだが、彼の奥さんにしてみれば
「あなたは何も手伝ってくれない。ゼロ、全くゼロ」
なんだそうである。

自分が編集長をつとめる雑誌「ケトル」で京都のイノダコーヒを取材したことがある。
僕はイノダコーヒの三条店が大好きで、特に奥の円形テーブルで新聞を読むのが好きだ。
日本で一番新聞を読むのに気持ちのいい場所だと思っている。
ということで、「ケトル」ではイノダコーヒ三条店の円形テーブルで新聞を読むことをお勧めした。
その時、イノダコーヒの方に、「このテーブルでは新聞が読みやすいよう、BGMをかけていない」というお話をうかがった。

すごい、心遣いだ。
でも多分、ブレンドコーヒー〈アラビアの真珠〉を円形テーブルで飲む人のほとんどはお店の心遣いに気付いていないだろう。
人が気付かない素敵なサービスを続けるイノダコーヒがさらに好きになった。

頑張れ、K君。
君の努力は誰かが見ているよ。

 

 


月刊連載『僕と京都』毎月2日公開
prof_shima 嶋 浩一郎

1993年博報堂入社。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年に博報堂刊『広告』編集長を務める。2004年「本屋大賞」立ち上げに参画。現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。

カルチャー誌『ケトル』の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長。2012年下北沢に内沼晋太郎氏との共同事業として本屋B&Bを開業。

編著書に『CHILDLENS』(リトルモア)、『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』(ディスカヴァー21)、『企画力』(翔泳社)、『このツイートは覚えておかなくちゃ。』(講談社)、『人が動く ものが売れる編集術 ブランド「メディア」のつくり方』(誠文堂新光社)がある。

好きなもの:ブルゴーニュワイン 地図帳 吸引式万年筆 時刻表 シングルモルト 新聞 年功序列とサラリーマン 歌川国芳 アヒルストア 小津安二郎 博士の異常な愛情 ウディアレン 鉛筆 檜のお風呂 ポストイット 僕は散歩と雑学が好き 神保町 マルセルラピエール アポロ計画 ラジオ 教育テレビ 京都