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シルクロード文化の交易路の茶館

このコラムを書き始めて、ふと思い出した旅があります。
ずいぶん前のことになりますが、シルクロードを3回に分けて旅しようと思い、上海から西安まで飛び、新疆ウイグル自治区まで行った時のこと。ウルムチ、トルファン、カシュガル・・・三蔵法師が天竺に行く際に通った道ともいわれる、シルクロードの主な町に立ち寄りながらの旅でした。
この時の旅の目的の1つが東西南北の交差路、カシュガルの週一回のバザールです。
ここでは、湖南省の黒茶「茯茶」という微生物発酵のお茶を飲んでいます。食生活でビタミン不足になり脚気や壊血病をひきおこすので、毎日このお茶を飲むことが欠かせないのです。
このお茶をやかんに入れて炊きだし、塩と家畜のミルクを入れ、御飯茶碗のような大きな腕で飲みます。時には砂糖を加えて飲んだりもします。

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この辺りの辺境地では、お昼間はとても暑く、スペインではないですがシエスタのように昼休みが長いです。男性たちは茶館でベットのような台の上に絨毯を敷いた場所で座り込みお茶を飲みます。
私は、このバザールの中にある茶館に入った時に見た光景を忘れることができません。高齢の男性がこの腕のお茶にパンを浸して食べていたのです。乾燥地域なのでパンを食べやすくするための食べ方、日本でいうお茶漬けと同じ発想です。

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この光景が忘れられず、直ぐにパン屋さんを探し、作っている所と販売している所に行きました。
インドのナンを焼くタンドリーのように土で作った窯、そこにはたどんが真っ赤にいこっています。中を覗くと周りにパンが張り付いた状態で焼かれています。形が二種類あり、一つは大きめのベーグルのようなパン。もう一つは、周りの部分が分厚く真ん中はクラッカーのようにピケされてパリッとした薄いカンパンのようなパン。
聞いてみると1週間に一度のバザールなので、週の前半はベーグルのようなパン、乾燥している地域なので週の後半は真ん中がクリスピーなパンが人気とのこと。分厚いパンは日が経つと硬くなるので、わざと最初から薄くクリスピーに焼いてるパンも作っているとのことでした。先ほど茶館で見たパンはベーグルのようなパンの方でした。

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小麦粉が主食である様々な国に行ってみると、お茶はお米とだけでなくパン食とでも相性良く使われていることがわかります。美味しいかどうかという以前に住んでいる環境で人は色々な食習慣を作って行くのですね。
こういったいろいろな発見と出会いが楽しく、こうして私の旅は続いて行くのです。

 


著者プロフィール

『メランジェ的世界の歩き方』毎月21日公開
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松宮 美惠 (まつみや よしえ)

200種類のお茶とお茶まわりのグッズを扱う「ラ・メランジェ」のオーナー。
ラ・メランジェは1988年に京都・北山にオープンし、92年からは同じ北山に店を移転拡張し、2005年9月烏丸二条に移転。2015年5月で対面販売 小売店店舗をクローズ。今後お茶を扱う専門家、飲食関連のサービス、お茶を教える専門家などに今までの経験を生かし指導をしていくことを新しいジャンルとして設ける。ものを売るというよりも、お茶とお菓子ですごす時間や空間、そこから生まれるコミュニケーションが大切だと考え、これを提案したいというのが基本的なコンセプト。このためお茶と食、またそれにまつわる文化に強い関心を持ち、1990年からヨーロッパを中心に海外に頻繁に旅し、情報を常に吸収し、ノウハウを蓄積しているのが強み。最近では、特に中国へ赴くことも多く、中国茶と茶器の品揃えも強化。現在、かの地の文化を修得しつつある。お茶については、海外からはお茶を直接輸入し卸しも行なうが、国内・国外のお茶とも、すべて自らテイスティングし、セレクトしたものを扱う方針。お茶のコーディネイトの仕事も多数。