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第四回 COFFEE CUP

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朝はほぼ毎日必ずコーヒーを飲む。

珈琲豆は、4種類あるSONGBIRD BLENDの中から、その日の気分で選ぶ。 コーヒーカップは、自分でデザインしたSONGBIRDのコーヒーカップと決めている。 見た目はシンプルだけど、ちょっとずんぐりしていて、コーヒーがたくさん入る所が気に入っている。 このコーヒーカップは、ちゃんとデザインの仕事をし始めた十数年前にデザインしたもので、思えば長い付き合いである。

ある時、オリジナルのコーヒーカップを作りたいと思ったものの、全くどうしたらいいのかわからなくて、京都で器や陶器を中心 にしたお店をされていた(現在は広島県の福山に移転)「nokiro art net」の佐藤さんに相談する事にした。作りが地味に複雑なことから、とりあえず「手びねり」で作ってみましょうということで、陶芸家の方をご紹介頂き、まずは サンプルを作って頂くことに。僕は外寸や内寸、口径や曲線のR寸法などをきっちり描き込んだ図面を「これでお願いします」 と陶芸家の方に渡し、ワクワクしながら完成を待った。

だけど、出来上がってくるものがなんか違う。カップ自体の出来も良く、寸法も図面通りなのにイメージしていたものとは微妙に違って、しっくりこない。でも何が違うのか良く自分でもわからなくて、佐藤さんにも陶芸家の方にも的確に伝えられない。サンプルを何度も何度も作ってもらい、実際に窯場にも通って、「口が当たる部分をもう少しぶ厚く・・」「あ、なるほど」「下の方はもうちょっと下ぶくれな感じで・・」「・・下ぶくれ?」 「なんか両手で持ちたくなるような・・・」「それ何となくわかります」みたいなやり取りを延々繰り返した。

袋に砂を詰めて、テーブルに置いた時に出来るぷっくりした丸みを「この感じで」と、一緒に撫であったりもした。で、段々と僕が最初に渡した図面の寸法自体が間違っていたことに気付く。細いディティールもさることながら、僕が作りたかったコーヒーカップは、僕が思っていたより実際は一回り大きかったのだ。

かくして、佐藤さんと陶芸家の木村さんに多大な手間を掛けて、僕が作りたかったコーヒーカップは完成した。 今となっては、ちゃんと何かを作ろうと思えば、この方法以外無いというくらい当たり前過ぎるやりとりである。 そんなことも知らないで、コーヒーカップなんて1か月くらいで出来ると思っていた若く無知な自分が、ちょっと羨ましい。

その後、量産などの理由からすぐに鋳込みで製造してもらう事になったが、型の原型は、今でも佐藤さんと木村さんに作って もらったあの最初のコーヒーカップだ。 このカップでコーヒーを飲むたび、その時のいろいろを思い出して、つい曲がりがちな背筋が少しだけぴんとなる。毎朝のちょっとした儀式です。

 


著者プロフィール
月刊連載『月刊 唄鳥』毎月5日公開
icon_songbird徳田 正樹
インテリア・プロダクトデザイナー
SONGBIRD DESIGN STORE.」代表

京都生まれ。大学卒業後、内装会社勤務を経て、1999年「IREMONYA DESIGN LABO」の立ち上げに参加。その後、2008年まで同社のデザイナーと代表を務める。2008年退社後、Masaki Tokuda Design.設立。2009年に、京都でカフェを併設したインテリアショップ「SONGBIRD DESIGN STORE.」開業。