人工知能はもう人類の職を……

奪っている、という言い方が適切かはわかりませんが、ロボットやAI(人工知能)が遂に人間の仕事の肩代わりをはじめました。

アマゾンドットコムが、2012年からの物流倉庫のオートメーション(自動)化計画の成果として、3万台を越える倉庫ロボットの稼働により運用コストの20%の削減に成功したと発表したことは、時事やビジネスに感度の高い方はすでにキャッチされているでしょう。

ドイツ銀行の試算では、商品の受注から入金管理までにかかる物流倉庫の費用、約22億6000万円のコストカットとのこと。

くわえて、アマゾンがまだ倉庫ロボットを導入していない100箇所以上の流通センターもオートメーション化すれば、約2571億4000万円の費用削減が見込めるそうです。

アマゾンドットコムという超ハイテク企業の経済規模の大きさに驚愕すべきか、今日のロボティクスのまさに破壊的イノベーションのポテンシャルの深さに眼を見張るべきかはわかりませんが、以下の動画をご覧いただければわかるとおり、ロボットやマシンとともに働くクリーンな未来の職場が今まさに稼動しはじめているのがわかります。

実は、去年の今頃、京都への引越し資金のために東京近郊の物流倉庫やマイナス20度の冷凍庫などで私はしばし働いていました。

記憶が確かなら、マシンらしいマシンといえばフォークリフトとベルトコンベアぐらいで、唖然とするほどの業務をさまざまな年代の作業員が慣れた手付きでおこなっていました。

2014、5年というと、人類がロボットや人工知能との能力競争にさらされることが日本でも熱心に議論されていた頃です。

たとえば、テクノロジー系の人気雑誌 Wired の編集長を務めあげたクリス・アンダーソンさんは、彼のオフィスの隣にある家具工場を例にあげ、当時リクルートの最年少執行役員であった出木場久征さんにこう語っています。

「その工場にはもはや人間の行える仕事は2つしか残っていません。ひとつはそれらロボットをプログラミングすること、そしてもうひとつはロボットの出したゴミを運んでリサイクルに回すこと。それがすべてです」

「私はこれが21世紀の「仕事」を表すメタファーであるように思うのです。すなわち片方には高賃金のホワイトカラーが存在する一方で、もう片方には低賃金の単純作業しか残されていない。このような事態が進行していくことで最大の懸念となるのは、これまで存在していた中間層が失われつつあるということです」

参照記事:特別対談 人間は機械との競争にさらされている http://toyokeizai.net/articles/-/35234?display=b

この記事を読みながら即座に私はこう思いました。

効率最優先の製造業ならオートメーション化も障害はないけれど、人間のあたたかさや手の温もりが求められる仕事はそう簡単に置き換えられないのでは?

そう、お店の接客のようなサーヴィス業は。

では、私の数年前の予想を木っ端みじんに砕いた上海のお店の動画をどうぞ。

この動画は、先月末にイギリスの公共放送、通称BBCが公開した、上海のKFCのコンセプトストアに設置の人工知能搭載ロボット「ドゥミ(度秘)」を取り上げたものです。

標準中国語はもちろん、上海語も理解し、オーダー処理も人間の店員より速いため、お客さんの並ぶ時間も短くて済んでいるのだとか。

注文をキャンセルすると、悲しい表情を浮かべたあと「人間のいるカウンターで再注文もできます」と伝える愛らしさも備えたドゥミは、利便性だけでなく「店員」としてもお客さんに愛されてもいるようです。

ロボットが接客する世界初の「ヒューマン・フリー・ファーストフード店」を謳うこのお店では、ほかにも、スマートフォンをワイヤレス充電できたり、音楽のストリーミングを無料で楽しめたり、モバイル決済をアプリでできたりします。

これは、KFCではなく提携先の中国大手IT企業のバイドゥ(百度)によるもので、彼らは接客ロボットのドゥミの開発に約10年を費やしたそうです。

アマゾンドットコムの場合、彼らのオートメーション化計画は3、4年前の比較的新しいものですが、これは、倉庫ロボットを製造販売していた Kiva Systems を795億5千万円で買収したことによります。

つまり、現状では、資本力と人材力のある世界規模の大手企業が労働のオートメーション化と無人化を推し進めており、私たちが普段接したり働いたりする街場のお店や会社にはまだまだ遠い未来の話……に聞こえるかもしれません。

では、世界初の従業員がいない24時間営業の食料品店がスウェーデンの海沿いの小さな町にオープンしたニュースをどうぞ。

Naraffar というこのお店では、スウェーデンの国民番号を利用した独自開発のモバイルアプリによって扉の解錠から決済まで完結しておこなえます。

ですから、オーナー兼エンジニアの Robert Ilijason さんの仕事は商品陳列と入金情報や在庫の管理だけ。

スマートフォンをもたない高齢者向けに店員も置くことを将来的には考えているそうですが、日本のコンビニが昼夜交代制の従業員を何人も雇い、大抵の店舗で求人の張り紙をだしていることを鑑みれば驚くべき効率化です。

インタビューによれば、彼のお店は地域の過疎化で商店が姿を消しはじめていることへの対抗策であり、このシステムを全国的に拡げることが今の目標だとか。

ちなみに、当然といえばそうですが、創業者の彼はただのITエンジニアではなく、人気家具屋IKEAのIT部門でコンサルタントも務めるプロ中のプロでもあります。

グローバルな巨大企業が買収や提携を通じて人間の仕事のオートメーション化とコストカットを強力に推し進める一方、高度な専門技能と知識をもったエンジニアがスタートアップとして新しい形態のお店を創業しはじめているのが今の状況です。

じきに、既存のお店や会社向けに、オートメーション化のサーヴィスを売りはじめる企業が続々とあらわれるでしょう。

私たちの今の仕事がロボットや人工知能などに置き換えられるのはいつでしょうか。来年、再来年、あるいは3年後、5年後?

機械との能力競争にいかに生き残るか、仕事がなくなったあとに何を糧とやりがいに生きれば良いのか、私たちはこれらを自身の問題としても社会問題としても真剣に考え抜かなくてはならない時期に差し掛かっているのです。

不満の鬱積と暇とがいかに人間を過激な政治行動と暴力行為に向かわせるかは、世界の現状と歴史が証明しているのですから。

今回ご紹介するのは、デンマークのロックシンガー Kill J です。

北欧というと、シンプルな色遣いと自然の素朴さが同居したインテリアデザインのイメージがありますが、彼女の楽曲や歌唱のように力強さと過激さをもった万人向けではない良いものがたくさんあります。

素晴らしいアートの力が人間を救いうることを、私は信じてやみません。

京都スタッフ 緒方勇人
http://engineerism.com/