ポケモンGOの本当の話をしよう

みなさん、摂氏35度を越える真夏日もポケモンをゲットされていますか?(わたしは挫折しました……)

先月6日、世界に先駆けて配信のはじまったアメリカなどを皮切りに、無料モバイルゲーム Pokemon GO の躍進が毎日のように話題を振り撒いています。

たとえば……

・うつ病や自閉症で何年も家の外にでられなかったひとたちを連れ出した

・深夜のセントラルパークにシャワーズが出現してお祭り騒ぎに

・体操の内村航平選手がブラジルでうっかり海外通信費50万円に到達

などなど。

今回は、地球規模の社会現象ポケモンGOの流行をテクノロジーとゲームの観点から分析してみましょう。

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引用:The Best Pokémon Go Sightings (http://kotaku.com/the-best-pokemon-go-sightings-1783421484)
Q.ポケモンGOのなにが凄いの?

まず、相応のプレイヤー数です。

以前紹介した最新の人気ゲーム、オーバーウォッチのプレイヤー数が1500万人に対し、ポケモンGOのダウンロード数はすでに1億人。

もちろん、前者は60ドルのAAAタイトルのゲームで、後者は基本プレイ無料のモバイルアプリですから公平な比較ではありません。

しかし、社会現象の肝は、動員数と瞬間風速の高さですから、たとえば私の父のように、普段ゲームをされない方々がいつものスマホを片手に外を歩きはじめたことが凄いのです。
Q.ポケモンGOって、面白い?

何をもって「面白い」と判断するかは難しいですが、ゲームデザインの観点でみた場合、ポケモンGOは意外にもシンプルな造りで出来ています。

というのも、このゲームの面白さは、未知のポケモンと出会ったり見知らぬ場所(ジムやポケストップ)に行ったりすることと、ボールを投げて捕まえること、そして、他のユーザーと強さを競うことに収約されるからです。

もっとも、ポケモンGOを、以前紹介したAR(拡張現実)技術を応用した新しいゲームとする声もありますが、ARはポケモンを捕まえるシーンに使われているだけであまり存在感はありません。

実際、AR技術の基本とされるコンピュータヴィジョンやディープセンシング(要するに「ロボットの眼」)による現実世界のダイナミックな理解は今のスマートフォンには不可能で、ポケモンGOで使われているのはむしろグーグルマップの位置情報です。

それは、このゲームの開発元が任天堂ではなく、グーグルの社内スタートアップとして出発し、2013年に位置情報を用いた陣取り合戦アプリゲーム Ingress で名を馳せた Niantic なことからも明らかでしょう。

つまり、ポケモンGOとは最も成功し話題を呼んだ(良くも悪くも)位置情報ゲームなのです。
Q.じゃあ、どうして流行ってるの?

まず、ポケモンという世界中に広く浸透しているコンセプトとの相性の良さがあります。

ポケモンの名が公式タイトルに付いただけで、歩くこと、捕まえること、育てること、集めること、戦わせること、交換することが、だれの頭にも容易に思い付いてゲーム体験として期待されたことでしょう。

だから、世界中の子どもから大人までが配信開始と同時に飛びつくことができ話題になったのです。

もうひとつ、ポケモンGOの流行自体の新しさのために、実際の流行り廃りよりも大きく注目されている節があります。

数年前に、日本の社会学者の鈴木謙介さんが「現実の多孔化」と言い得て妙なことを指摘しました。

これは要するに、現実空間に無数の穴が空いたように大量の情報が出入りし、従来では当たりまえの「現実」が(観るひとによっては)複雑なリアリティを形成しているということ。

ポケモンGOでいえば、オンライン上でたまたまある現実の場所に珍しいポケモンが出現したことで人々が大量に押し寄せたり、ポケストップ付近の現実のお店がポケモンを呼び寄せるアイテムを使ってユーザー向けの販促に結び付けるなどです。

そしてこれらはすべて、オンライン上の出来事を把握していないひとたちにとっては奇妙奇天烈きわまりません。

この現実空間の複雑なリアリティこそが今の時代の特徴であり新しさなのです。

つまり、ポケモンGOの流行は、ゲーム自体のおもしろさ以上に、私たちがいま生きている世界の特徴を象徴的かつ大々的にあらわしているがゆえに、メディアに頻繁にとりあげられては更にひとを呼ぶという好循環に入ったのです。

今回ご紹介するのは、アメリカ・テキサス州のミュージシャン Bayonne です。

知名度はまだまだな方ですが、以前紹介した Dan Deacon や Daedelus に続く私の大好きな音楽家。

ミニマルな構成とアンビエントの聴きやすさを基調としながらも、声や音の重ねかたで奇妙に重厚感のある楽曲を発表しています。

彼もまた、多孔化した現実の恩恵を被れると良いのですが……。

京都スタッフ 緒方勇人
http://engineerism.com