今夜、すべてのバーで 4.

前回のつづき
ぼくが小学生だった頃は、キカイダーやウルトラマン、仮面ライダー、星野鉄郎といったヒーローがいた(999以外は再放送組)。もちろん彼らはフィクションの中に生きるヒーローだったけれど、これが中学生にもなると少し変わりはじめる。相変わらず、シャア・アズナブルというフィクションのヒーローもいたけれど、ぼくにとっての “実在する” 永遠のヒーローが現れた。それが松田優作さんだった。

松田優作さんのことを書きはじめると、本題からそれて止まらなくなりそうなので気をつけないといけないけれど、とにかく何から何までカッコよかった。ぼくら世代の男子は、当時みんなが憧れていたと思う。これが少し上の世代の方になると、恐らくその対象がショーケン(萩原健一さん)になる。
ぼくが19の時に最初にお世話になった10歳年上のお師匠さんから「ショーケンに憧れて、板前になったやつがいっぱいいた」と教えてもらったことがあった。これは、萩原健一さんがドラマ「前略おふくろ様」で板前さんを演じられた影響なんだけれど、昔のスター、ヒーローには、多くの人にこれほどまでの影響力が本当にあった。今なら木村拓哉さんぐらいか・・・それなら深刻な人材不足のパン業界や飲食業界のために、木村拓哉さんか福山雅治さんか向井理さんあたりに職人役のドラマでもやってもらえるのが一番手っ取り早い気がするなぁ(ぼくは観ていなかったけれど、向井さんがコック役をされていたのはどうだったんだろ・・・)。

ぼくら世代の男子に絶大な影響力のあった松田優作さんから連想するものの一つといえば、バーボンだった。本当に惜しまれ早逝されてしまったけれど、その人生の後期はワインに凝られていたといった話も読んだことがある。それでもぼくの中では松田優作さん、お酒とくれば、バーボンのイメージが強い。
若い頃、ぼくらバカな男子が集まってお酒を飲もうというとき、みんなが缶チューハイだのビールだのを持ちよる中、ぼくだけがバーボンを持って行ったことがある。今でも覚えているぼくが初めて買ったお酒、I.W.HARPERというバーボン。もちろんバーボンがどんなお酒なのかも知らず、酒屋さんのご主人に「バーボンをください」とだけ言って買った。
友人などに「何を飲んでいるの?」と訊かれた際に「バーボン。」とだけ言いたかったということもあるし、”優作さんがバーボンって言っているんだから男は黙ってバーボンだろ。” と本気で思っていた。正直、匂いだけで倒れそうになるくらい臭いとしか思えなかったし、40度もあるアルコールを下戸であるぼくが飲んだらどうなったのかは書くまでもない。それでも涙目になり、前後不覚になりながらも飲もうとしていたのは、少しでも松田優作さんに近づきたいという憧れに他ならなかった。

やっぱり今の時代、若い人たちのお酒離れの要因の一つには、 “お酒の似合うヒーローの不在” があると思えてならない。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。