独立した元スタッフとの話。4.

前回のつづき
あれから約30年が過ぎた。こう書くと語弊があるかもしれないけれど、あの頃というのは今の時代と比べると、事業をする側にとっては税務や労務も含め、いろんな面で制約などがゆるかったりと、やりやすい部分が多かったんじゃないかと思う。それにぼく自身がそうだったように、独立を前提に一時的に繋がろうとする雇われる側と、戦力を回転させることでお店を成立させていた雇う側との折り合いが ”修業” という暗黙の了解でバランスした、どちら側にとってもある意味幸せな時代だったんだと思う。そう考えるとパン屋さんやお菓子屋さんなども含めた飲食業というのは、ぼくのお師匠さんらが言われていたように ”回転(独立)を前提とした、コストの低い若い子が定期的に働きに来てくれることで成立していた” という極めて脆弱なビジネスモデルだったということになる。

昔、これもぼくが駆け出しの頃のことだから30年近く前のことだったと思うけれど、料理の専門誌に掲載されていた有名なシェフの対談を読んでいると、そこには未だに忘れられない一言が載っていた。

「どうしてフランス料理店が成り立つかといえば、従業員の給料が安いからですよ。」

まぁ正直というか、”このシェフ、簡単にパンドラの箱を開けちゃったよ・・・” と、当時のぼくは何だか笑えたんだけれど。
飲食業界がいわゆる “修業” という暗黙の了解が成立するからのビジネスモデルである以上、そこが成立しなくなれば機能不全になるのは当然のことだし、今が正にそういった時代になったということなんだと思う。もちろんここで書いている “修業” というのは、対談でシェフが話されているのと同じ  “労働条件”  のことを指している。
本来の ”修業” というのは、学ぶことやそういった姿勢の部分を指していたはずだと思うんだけれど、それを雇用する側が労働条件と混同させ恣意的に使ってきたということが、今の時代の変化に順応できずにいる原因の一つなんじゃないかと個人的には思っている。だから本来の ”修業” という部分は必要だし残すべきだと思うけれど、それと労働条件や労働環境といったものを、雇用する側が切り離して考えれるようにならない限り、お店や業界が凋落の一途を辿るのも当然のように思える。
そんなことを思った元スタッフとの話だった。

img_7779

«                    »

西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。