“小さくて強い店” を考えてみた 7.

前回のつづき
1人や2人でされているパン屋さんに、どれほどの製造能力があるのかと考えれば、その限界は意外と低い。
そもそもパン屋さんの仕事というのは、いくつものポジションがある上に、仕込みから始まり、それが商品として完成するまでにかなりの時間を要する。それを複数の職人さんによって、ポジションの違う仕事を同時に並行して進めることができるから、必要な製造量を作ることも、今のような労働時間で終えることも(それでもまだ長い)可能になる “性質の仕事” といえる。
その並行して仕事を進めることができない状態でパン屋さんをするということは、1つのポジションの目処がつくなり終われば、次のポジションの仕事をするといった、これ以上ないほど非効率な仕事の仕方につながることになる。
パン職人さんならわかると思うけれど、これだと同じ仕事量であったとしても何時間働いても終わらない。こんなやり方では当然身体を壊すことになりかねないから、今度は1つ、1つの製造量を抑えるようになる。こうして、営業時間を何時間も残して「本日は完売致しました」と早々に告知をされたり、わずかな棚さえも商品がまばらにしかないようなお店が出来上がることになる。
またそのお店の商品価格が、いわゆる普通のパン屋さんの価格設定だった場合、その売り上げがどういったことになるのかは書くまでもないと思う。
もしかすると、お客さん側から見れば、早々に売り切れを起こしてしまうくらいの製造量のお店なら “気楽にやっている” と思われるかもしれないけれど、中で働いている人というのは、”その程度の製造量のために” 実は尋常でないほど働かれている可能性も高い。これが “パン屋さんという仕事の性質” であり、適切な人員で運営しないと、経費を抑えているつもりが逆効果で、恐ろしく非効率な結果になりかねない(もちろんその逆も然りなんだけれど)。

うちで働いてくれた子たちが独立をする時に、挨拶に来てくれることがある。その際にぼくは必ずというほど「まず1人でもスタッフを雇った方がいい」と伝えるんだけれど、それでも中には「人件費を考えたら怖くて雇えないです。」という子もいて、「社員が無理なら、せめてアルバイトを雇って。絶対にその方が効率もいいし、身体を壊したらそれまでだよ。」と言ったものの、「そのアルバイト代さえ払える自信がないんです」とその時には言っていた元スタッフも、今では複数のスタッフを雇用している。

元スタッフではないけれど、身近な人たちの中だけでもパン屋さんをやって、お店を潰した人が3人おられる。必ずしもそれが原因とは言い切れないけれど、いずれも1人で製造をされていた人たちだった(ぼくが助言をしたけれど、聞き入れてもらえなかった人もいる)。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。