“小さくて強い店” を考えてみた 8.


前回のつづき
本来、パン屋さんの仕事というのが分業でやるからこそ、必要な量を製造することができて成立するものだと考えれば、それを1人や2人でやろうとするのは、やはりかなり無理があると思う。また、そうした無理をすることで成立をさせようとすると起こり得る弊害もたくさん考えられる。例えば営業時間内なのに行っても選べるほどパンがなかったり、完売しているということが続けば、その時間帯でないと行けないようなお客さんは恐らくもう来店されなくなる。いわゆる機会損失で、これが常態化すれば当然その後の業績は伸びるどころか良くても現状維持、いずれはお客さんが減り、ただでさえ少ない売り上げがもっと下がることだって十分に考えられる。
また、パン屋さんに限らず飲食のお店をされる方というのは、自分たちの作るものに自信があるとか、少なくとも自分が美味しいと思って作るものを少しでも多くの方に食べてもらいたい、知ってもらいたいという気持ちでされている。ところがせっかく美味しいものを作っても、それが届くのは手にしたお客さんだけということを思えば、元々お客さんがそれほど多くもない小さなお店が品切れを起こしていたのでは、そのお店や味を知ってもらう機会も、そこから広がる可能性も小さくなる。
売り上げという側面以外から考えてみても製造量が少ない、足りないというのは、やはりデメリットにしか思えない。

この話の最初に小さな店のメリット、強さの要因として初期投資やランニングコストの低さから損益分岐点が下がることを挙げたけれど、それも ”売り上げがあっての経費” の話なんだから、どれだけ経費を抑えたところで(もちろん経費を可能な限り抑えることは大切)、そもそもちゃんとした売り上げを確保できなければ、経費云々以前の話ということになる。結局、お店を維持継続していくためには、しっかりと利益を生み出す必要があって、そのためには相応の売り上げが必要で、それは売れるというとても大切なこと以前に “必要量が製造可能” ということが大前提になる。もし、この必要な製造量が作れていないというお店(これはパン屋さん、少人数のお店に限らず)は、この先続けていくために否が応でもいずれ何かしらの対策を打たれることになると思う。その時に、恐らく多くの職人さんがまずやろうとされるのが、昔のぼくやその世代の人たちの多くがそうであったように “無理をする” “気合いや精神論で何とかしようとする” という、つまり寝ないで働いたり、休まずに働いたりしようとする方が多いんじゃないかと思うんだけれど、それはしない方が良い、別の方法を考えた方が良いですよ、と思う話は次回。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。