“小さくて強い店” を考えてみた 9.

前回のつづき
“無理をする”、 “気合いや精神論で何とかしようとする” といった働き方は、しない方がいい。とは書いたけれど、実際には、よほど仕組みのできているお店でもない限り、そういったことが避けれない場面はやはりある。
例えば開業直後の時期がそうだろうし、年に何度かある繁忙期など(わかりやすいところだと、お菓子屋さんのクリスマスやバレンタインのシーズンなど)といった時には、多少の気合いや気概だっている。
問題なのはこれが常態化することなんだけれど、お店を始めたばかりというのは、たいていの人が “あれもこれも作れる” のでやろうとする。ところがあれもこれも作ることができていたのも、実は勤めていた時に自分以外にもスタッフが何人もいてくれたからであって、それを1人、2人で始めたお店で同じようにやろうとしたり、それに近いことをやろうとするには当然無理がある。だからかえって必要な製造量を作ることができず、早々に売り切れを起こしたりすることになる。またそれを無理に増やそうとすると、今度は身体を壊すほどの長時間労働になる可能性も高い。
そんな簡単なこともわからないのか、と思われるかもしれないけれど、意外とわからない人は多い。いや、頭ではわかってはいるんだろうけれど、お店を始めたばかりのたいていの人というのは、それほど気持ちが前のめりになっているし、必死でもある。ぼくもそうだったから気持ちはとてもよくわかる。

それなりの額を借り入れて始めたお店である以上、作れないといけなければ売れもしないといけないけれど、かといってお店というのは、2年、3年でやめれるわけでもないんだから、何年間も継続させる必要がある。
ギリギリの人数で運営をするというのは、誰か1人が怪我や病気といったことにでもなれば恐らくお店は臨時休業になるだろうし(最近、ぼくの身近でも何軒もこれがあった)、場合によってはそれが長期になることだってあり得る。ぼくには、もうこれだけでも小さな店の大きなリスクとしか思えないんだけれど。

元スタッフの中には、雇われていた時には適当な理由で休んでいた人が、自分でお店を始めたら骨折をしても休まずに仕事をしていたということがあったけれど、これなんかは “自分でお店(小規模)をする” ということの象徴的なことに思えたものだった。
じゃあ、ぼく自身は昔どうしてきたかといえば、やはり無理をした。休みを取らなかったり、寝ずに働き続けるということをしてきた。当時は、そうせざるを得ないと本気で思っていたけれど、きっと他にやり方や方法はあったと思う。それをしなかったのは簡単な話で、ぼくの考えが足らなかったからだし、バカだったということに尽きる。
”あの時(の大変さ)があったからこそ、今が” といった見方があるかもしれないけれど、ぼく自身はまったくそう思わない。それよりも、あんな無茶な働き方をしてきていながら今こうして無事に続けていられることの方が、 “たまたま” で ”運が良かっただけ” としか思えないし、何よりも ”あの時にもっと考えてやっていれば・・・今頃、もっと前に進めていたに違いない” と思えてならない。

生産性の低さを長時間労働で補うといった考えは、悪しき慣習を助長させるだけで決して問題の本質を解決するものじゃないし、またそれを正当化するために “よくわからない精神論” や “業界でしか通用しない常識” を持ち出しやり過ごそうとするのは、やっぱり思考停止なんだと思う。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。